消費税率を上げても国の借金は一向に減らず

いよいよ消費税率が、1日から5%から8%に上がり、法律通りなら来年10月には10%に上がる。しかしながら、この程度の増税では、国の借金は一向に減らない。日本の財政状況は、そんなに甘い状態ではないのだ。

先ず最初に、悲惨な状況を確認。国債や借入金などを合わせた「国の借金」は、昨年6月末で約1008兆円になり、初めて一千兆円を突破、2014年度末には約1144兆円になる。この借金は、国内総生産(GDP)の2倍強。一般会計予算約96兆円のうち税収は約50兆円、新規国債約41兆円で、国債依存度約43%。

それでは、日本の財政破綻の回避には、どのくらいの消費税率が必要であるのか。欧州各国の消費税率は、20%台が普通であるが、昨年7月発売の経済誌「ダイヤモンド」には、下記の文面があった。

「米アトランタ連邦銀行のブラウン氏らの研究では、社会保障費の膨張を抑制せずに、財政破綻回避のために2017年に一気に消費増税を行う場合、最終税率は約33%に達すると予測する。また、米カリフォルニア大学のハンセン教授らは約35%、私(法大教授)は2050年ごろの消費税率は約31%と推計している。さらに、ブラウン氏らの研究では、アベノミクスの『2%インフレ』が実現した下での試算も行っており、その場合の最終税率は約25%と推計する。」

要するに、高齢化で毎年1兆円超のスピードで社会保障費が増加する中で、近々の10%の消費税率では、そのコストを賄うには限界があるという。その意味では、この程度の増税を批判している段階ではないのだ。

大多数の政治家やエコノミストは、大幅な増税を実施しなければ、財政が行き詰まる事を良く理解している。しかしながら、政治家の中には、国民からの批判を気にして、志しや信念をねじ曲げて発言している人間がいる。こんな人間は、政治家になるべきではないし、我々も選ぶべきではない。

私は5年後か、20年後かはわからないが、結局、日本もイタリアのマリオ・モンティと同じように、政治家に財政再建は無理という事で、経済学者が首相に就任するのではないかと心配している。もう残された時間は少ない。議論の段階から実行の段階である。

先ずは、歳出削減。元々、国民が負担額をはるかに超える行政サービスを受けた事で、財政赤字がここまで増加した。それならば、多少の不便があつても、歳出削減を断行するしかない。国家が破綻して一番困るのは、国から多くの援助を受けている人なので、まずはその人たちによく事情を説明するべきである。

最後に、雑誌「選択」に掲載された星岳雄・スタンフォード大学教授のインタビュー記事を紹介する。

○一千兆円を超えた債務残高を抱えた財政は持続不可能だ。早ければ2022年には政府債務が民間金融資産を上回るとみられており、財政再建は最優先課題だ。

○生産性の低い公共事業部門への支出を減らすと同時に、さらなる増税が必要。これを先送りすればするほど傷口は開く。…財政再建は緊急の課題だ。