北海道ならではの教育機関の悩み事

ネットで「北海道新聞」の連載記事「札幌集中のリアル・広がる教育格差」(4月20日と22日付け)を読むと、北海道ならではの教育機関の悩み事が見えてきたので、オホーツク管内の友人から記事全文を送付してもらった。それでは、新聞記事の主要な部分から紹介する。

①道立高校の教頭は学校運営の要の役職だが、なり手不足は年々深刻さを増している。昇任試験の受検倍率は2011年度で2・9倍だったが、20年度は1・0倍まで低下した。

②教員は管理職に限らず道内地方勤務を敬遠し、都市部を志向する傾向は、新卒者の採用段階から顕著に現れている。20年度に行った教員採用試験の小中学校の受検者数を見ると、道教委採用が20年前に比べ72・0%減の計1513人だったのに対し、札幌市教委採用は1・7倍の計1014人と大幅に増えた。

③道内の小中学校教員の管内別平均年齢(グラフが掲載)を見ると、根室、宗谷、留萌、オホーツク、日高、釧路、檜山、上川、十勝、胆振、後志、渡島、石狩、空知の順で年齢が高くなる。つまり、経験豊かなベテランが都市部に、若手が道内地方に多く配属されている。

根室管内羅臼町の高校(78人)は毎年30〜40人が入学するが、今年は地元中学校を卒業した35人中28人が町外17高校に入学したので、7人しか入学しなかった。町外の高校で最も多く卒業生(13人)が選んだのは、約50㌔離れた隣の根室管内津高(103人)だ。

⑤道内の高校数は277校と、30年間で61校減った。生徒が減っても学級数を減らせない定員1学級40人の高校は、昨年度で58校。2年連続で1年生が10人未満だと再編対象になる。

⑥地元の高校存続のために、渡島管内福島町は高校生向けに10万円の入学奨励金を支給するほか、自動車免許取得費用も10万円分補助している。留萌管内苫前町は、高校生の帰省バス代を補助するなどして、札幌圏での生徒募集に力を注ぐ。

以上の実情を見ると、北海道ならでは課題が見えてくる。①②から見えてくるのが、東北6県+新潟県という北海道の広さだ。要するに、道立高校教員の職を得ると、広大な北海道全体が異動対象になるが、政令都市・札幌市の教員であれば、札幌市内だけの異動になる。だから、札幌市教委採用の倍率が高くなるのは、何ら不思議ではない。

新聞記事の中でも「大学まで札幌で過ごした人にとって、地方は全く別世界に映るようだ」と書いているが、その見方は良く解る。吾輩は昔、都内や宇都宮市で開かれた「北海道ふるさと会」には何十回も参加し、函館や札幌辺りの道央出身者と対話したが、その人たちの多くが、北海道の奥地の実情が理解できない。そもそも、修学旅行で行っただけであるから、意外と道内のことを知らないのだ。

③に関しては、まさに「オホーツク斜面」そのものである。以前にも書いたが、オホーツク海に面した地域は、旭川から石北トンネルを越すと、どんどん学力が低下するので「オホーツク斜面」というらしいが、その地域は宗谷、オホーツク、根室各管内である。それに日高を加えた地域は昔から学力が低く、今でも全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の管内別の平均正答率は、全道平均を下回っている。つまり、全国学力テストの不振な地域と、小中学校教員の管内別年齢構成とが、不思議なくらい一致するのだ。ということは、「オホーツク斜面」の教員は若手が多く、そのために生徒の学力が低いという因果関係があるのではないか、とあらぬ疑いを持ってしまう。それくらい、統計数字と重なるのだ。

⑤に関しては、高校数277校のうち「定員1学級40人」が58校というのだから、全体の21%も該当するのだ。この割合は、辺地の人口が減少することを考えると、今後急速に増すことが予想でき、今のうちから地域の“中核高校"との統合・再編計画を急ぐべきではないか。

⑥に関しては、自治体は「1学級高校」という小さな高校を維持するために、さしあたり新入生獲得のために助成金を出している感じだ。しかしながら、1学級の高校を維持するための優遇措置も、当面町のためになっても、少人数の環境ではコミュニケーション能力や競争力が培われにくいことは否定できない。

遠軽町も遠方から生徒を呼び込むために、下宿代や通学定期代の半額を助成する制度を実施しているが、これは高校存続のためではなく、地域の“中核高校"として、周辺地域の教育環境を充実させるためである。そこには、町の発展と共に“地域の教育環境に責任を持つ"という行政側の高い志しがある。

以上、北海道の教育現場の現状、問題点、課題などを紹介してきた。だが一方で、抜本的な改革も必要ではないのか。

例えば、北海道は1869(明治2)年に11カ国86郡に分け、97年(明治30)年に19支庁、そして1922(大正11)年に現在の14支庁(現在の振興局)に分けてきた歴史があるが、それを8支庁に再編する必要もあるのではないか。以前、北海道議会の「自民党・道民会議」が北海道を複数の県に分ける「分県」案を議論したことを紹介したが、現在の“14支庁体制"も「北海道に定着した」という理由だけで、面積(十勝支庁1万831平方キロ、檜山支庁2630平方キロ)も、人口(石狩支庁239万人、檜山支庁3万3千人)も、これだけ開きが出て良いはずがないではないか。

一つの再編案を提起すると、

○函館支庁(渡島、檜山、後志の南部〈倶知安を含む〉、胆振の西部〈室蘭を含む〉)

○札幌支庁(石狩、後志の北部〈小樽を含む〉、胆振の東部〈苫小牧を含む〉、日高)

旭川支庁(上川、ただし名寄以北は稚内支庁に)

稚内支庁(宗谷、留萌の北部、上川の北部〈名寄を含む〉)

○滝川支庁か留萌支庁(空知、留萌の南部)

○北見支庁(オホーツク)

釧路支庁(釧路、根室)

○帯広支庁(十勝)

以上の「8支庁体制」にするために、稚内支庁か、苫小牧支庁かで、ずいぶんと悩んだが、やはり対ロシア関係で道北が重要と考えて、稚内支庁の維持に決めた。この8支庁体制であれば、優秀な道職員や教員も多少は支庁独自で採用できるのでないか。いずれにしても、14支庁は多すぎるし、人口も面積もバランスが全く取れていないことだけは確かである。