市町村歌を“人を呼ぶ武器" にしたいものだ

JR我孫子駅発車メロディーが、7月1日から「あびこ市民の歌」と「河童音頭」に変わるので、その前に原曲を聴きたく、我孫子市役所に赴いた。そうすると、職員が「空のCD版を持参すれば、録音してあげます」というので、すぐに近くの電気店でCD版を購入して録音してもらった。録音後、職員はレコード版「あびこ市民の歌」を手渡してくれるとともに、「我孫子市役所のホームページでも歌は聴けますよ」と教えてくれた。

帰宅後、さっそくレコードのジャケット裏側に記された歌詞を見ながらCDを聴くと、あの懐かしい小椋佳の歌声が聞こえてきた。まずは、ジャケット裏側に記された歌詞を紹介する。

ー作詞/平塚歌子、補作詞/小椋佳、作曲/小椋佳、編曲/乾裕樹、歌/小椋佳

〈歌詞〉

1・紅いつつじの花の波/あびこの丘の春名残/欅並木を行く君を/淡い光の光の夢が追う

2・水面をコサギが舞い遊び/手賀沼はねる夏しぶき/白い翼の背に乗って/熱い思いが思いが空を飛ぶ

3・夕陽まばゆい利根川に/揺れるすすきの秋穂波/風も流れも草苗も/君に届けと届けと愛の歌

4・朝のひかりに雲遠く/北は筑波の冬化粧/渡るつぐみの鳴く声も/君を思えば思えば春便り

この楽曲は、我孫子市市制10周年を記念し、小椋佳が作曲したということで、7月1日付け広報紙「市制施行50周年広報あびこ」一面に、シンガーソングライター・小椋佳の発言が掲載された。

ー40年ほど前に創った「あびこ市民の歌」が今なお市民の皆様に愛され親しまれていることを大変嬉しい思います。7月から我孫子駅発車メロディーに採用されたと伺いました。この歌が市の発展とともにさらに広がることを期待しています。ー

等々の予備知識を得て、JR我孫子駅発車メロディーを聴きに行った。事前に原曲を聴いていたので、何となく発車メロディーが解ったが、メロディーが流れる時間が短いので“こんなものか"という感じになった。

ホームの周りを見ると、鉄道好きな若者が発車メロディーを録音するため、高い位置にあるスピーカーに長い棒にくくりつけたマイクを近づけていた。話し掛けると、「隣駅の柏駅でもサッカーチームの応援歌を発車メロディーに採用している」と教えてくれたが、今まで気がつかなかったので、発車メロディーの認知度はその程度なのかと思った。

次は、遠軽町の歌を取り上げたい。その歌声は、地元であまり浸透していないが、歌詞には地元の名所や、土地の雰囲気を織り込んでいる。その歌が誕生した背景や歌詞は、遠軽町の後輩が送ってくれたCD版「故郷のシンフォニー」(作詞=山田昌一、作曲・編曲・歌=山田洋子、製作=㈲マイダスタッチ)のジャケット裏側に記されていた。

遠軽のイメージソング「故郷のシンフォニー」町民に活用呼びかけー

遠軽商工会議所と遠軽観光協会は、遠軽町の観光的なイメージソングとして平成9年の開拓100年の際にお披露目された「故郷のシンフォニー」を取り上げていくよう遠軽町に働きかける一方、町民にも「機会あるごとに使ってください」と呼びかけている。

この「故郷のシンフォニー」は、遠軽町岩見通北5、山田昌一さんが作詞し、平成6年に新聞紙上で発表されたのを山田さんの長女で東京在住のプロミュージシャン山田洋子さんが作曲、編曲、歌を担当して発表後、遠軽町に寄贈された。100年式典の席上で遠軽混声合唱団により披露されたが、遠軽町の名所や町花、町木など四季折々の情景が描写され、曲もポップス調で明るいメドレーで歌いやすい曲になっている。

商工会議所、観光協会では町内各関係団体をはじめ、学校、幼稚園、大型店などにカセットテープやCDを配布するほか、各種イベントや大会さらに、テレビやラジオにも使用していくよう働きかけるよう町に要望した。

ということで、地元の有力機関が、地元民に浸透させるために宣伝する姿が見える。だから、吾輩も取り上げたわけだが、まずは歌詞を紹介する。

1・光こぼれる礼拝堂の古いピアノから/思い出のシンフォニー/それはあなたの瞳の輝きのように/わたしもこの町が好きです/北国の春を告げる山桜の花に/故郷の山がこだまします

2・いわね橋から眺めてごらん/湧別川のさざ波のシンフォニー/それはあなたの小さなえくぼのように/わたしもこの町が一番好きです/夏祭りの踊りも黄金色のひまわりも/故郷の風にゆれてます

3・瞰望の小道を尋ねてごらん小鳥の声に/開墾(つちもと)のシンフォニー/それはあなたの軽やかな歩みのように/わたしもこの町が一番好きです/ななかまどの実色ずく実りの秋は/故郷の温もり感じてます

4・霧氷が朝日に映える川辺を行けば/きらめく宝石のシンフォニー/それはあなたの新しい明日のように/わたしもこの町が一番好きです/粉雪も汗も楽しいクロスカントリー/故郷のシンフォニーいつまでも

歌詞から遠軽町の名所や情景が浮かび、なかなかいい歌詞になっている。その中で、礼拝堂というのは街中の教会か、それとも家庭学校の教会のことか。いわね橋は、吾輩の少年時代には存在しない橋であるが、今では遠軽橋より有名になっているのか。クロスカントリーというのは、もう20年前から始まった冬のスキー大会のことか、等々と考えながら聴いた。

いずれにしても、今は自治体間競争が激しいことから、少しでも街中を活気づける“人を呼ぶ武器"が必要な時代になった。それを考えると、地元民に支持される“歌声"があれば、多少カネを掛けて“町歌"を制定することは無駄ではないと考える。

なお、ネットでは「市町村歌」を、日本の基礎自治体である市町村が制定する歌の総称で、市町村の歌、市町村民歌、市町村民の歌、あるいは自治体歌とも呼ばれる。それに当てはめると、我孫子市の「あびこ市民の歌」(1981年1月15日制定)は“市歌"と言えるが、遠軽町の歌は“町歌"とは言えない。だが、これから地元に浸透すれば、将来的には“町歌"になる楽曲と考えるのだ。