千島海溝の巨大地震の発生は切迫している

新型コロナウイルス禍の来襲で、皆さんも同じと思うが、吾輩も日々緊張感が続いている。その影響で、気力も体調も低調で、さらに米疾病対策センター(CDC)の所長が「次の冬にウイルスが襲う可能性がある。そうなれば、今よりもかなり困難な状況になる」旨の報道(22日)に接すると、ますます気分が重くなる。このような状況を「巣ごもり生活」というらしいが、最大の問題は“見通しが全く立たない"ことだ。

さて、内閣府の「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会」は4月21日、北海道から岩手県の太平洋沖で、過去最大級の地震が発生した場合の最大津波高の推計結果を公表した。この巨大地震は、日本海溝マグニチュード(M)9・1、千島海溝はM9・3で、このエネルギーはそれぞれ2011年の東日本大震災(M9・0)の1・4倍、2・8倍にも上るが、これから取り上げるのは、千島海溝の方である。

6年ほど前、吾輩は「釧路市に所在する行政機関は帯広市に移転すべき!」(7月25日)という文章を作成した。そういう意味では、やっと国から正式な危険情報が発されて良かったと思うが、この巨大地震に対する対策は基本的に“いち早く逃げる"ことと考えている。

まずは、有識者検討会が公表した巨大地震発生の根拠や各地で想定される津波の高さなどを紹介する。

○北海道から岩手県の沿岸で過去6500年に起きた計18回の津波で運ばれた堆積物の分析から、津波は12〜13世紀と17世紀にそれぞれ最大規模の津波が起きた。その間隔は300〜400年なので、17世紀の津波からの経過時間を考えると、次の最大クラスの津波の発生が切迫している。

○道内の沿岸で想定される地震は、釧路管内厚岸町浜中町の2町では震度7と予想される。津波の高さ(最大沿岸津波高)は、日高管内えりも町の27・9㍍が最も高く、次いで釧路町27・3、十勝管内豊頃町25㍍、根室市22㍍、釧路市20・7㍍と続く。

○浸水する役場庁舎は釧路管内厚岸町8・1㍍、白糠町6・3㍍、釧路市5・9㍍(最大浸水時刻34分)、日高管内えりも町5・3㍍、釧路管内浜中町4・4㍍、根室管内標津町2・9㍍である。

それでは、なぜ故に吾輩が、釧路市をターゲットに警戒しているかと言うと、約6000年前の釧路湿原一帯は、浅い湾を形成し、約4000年前に現在の海岸線が形成された。いってみれば、釧路市周辺は非常に標高が低いのだ。

そのほか、釧路市の場合、地形的に千島海溝に平行し、そのために真っ正面から大津波が到来する。また、陸上部にも津波を遮るものがないので、流れが緩やかな釧路川(長さ154㌔)では、上流30㌔、50㌔まで津波が到来する可能性がある。おそらく日本で、この地点まで津波が到来する河川はないのではないか。

昨年5月末、屈斜路湖から釧路市釧路市から太平洋に沿って襟裳岬まで車で走ったが、その時に感じたことは、何の障害物もないので、相当奥まで津波が到来すると感じたことだ。そして、夕方に釧路港近くで飲酒した際には「今、大津波が到来したら逃げられない」と観念したことだ。

それでは釧路市は、何の対策も考えていないのかというと、東西に走る鉄道で市街地が南北に分断されているので、JR釧路駅津波防災を目的に高架化計画を本年度中に策定する。高架化すれば、鉄道の下を5本の道路を走らせることで、津波から避難しやすくなるという。ところが、この計画は早くても着工まで7〜10年かかるというのだ。こんなノンキなことで、人的被害を減らせるのか、と心配になる。

いずれにしても、道東最大の都市である釧路市は、中国も釧路港の重要性を理解して、何らかの関わりを狙っているように、非常に重要な都市である。だが、致し方がないというものの、地形的な問題から大災害から逃れる方法は少ない。そのため、前回は少しでも人命を救うためと、重要な登記簿など保全するために「経済活動と関係ない裁判所などは帯広市に移転するべき」と主張したのだ。この考え方は、今でも変わらないので、この思いを少しでも永田町や霞が関に届かないものかと考えている。