全日本吹奏楽連盟の不正会計の結末は

全日本吹奏楽連盟は1月27日、事務局長と次長を約1億5千万円の横領で解任した。その報道を受けてネットを見ると、吹奏楽に関心ある人たちが「事務局長と次長の名前が発表されていない」と書き込んでいた。ほどなく、事務局長の名前が書き込まれたが、その後は何の情報もなく、今日に至っている。

そこで、最初に1月28日付け「朝日新聞」から紹介する。

吹奏楽連盟事務局長ら解雇 給与など1.5億円を不正受給ー

一般社団法人・全日本吹奏楽連盟(東京都千代田区、丸谷明夫理事長)は27日、給与・賞与を水増しして受け取っていたなどとして、50代の事務局長と40代の事務局次長の男性2人を懲戒解雇し、発表した。二重帳簿を作るなどして2010年度からの約10年間で不正に得た金額は、計約1億5千万円にのぼるとみられる。連盟は民事・刑事両面で2人の責任を追及するという。

記者会見した丸谷理事長らによると、解雇はこの日あった連盟の臨時理事会で決めた。10年4月からの決算報告書も修正。不正を見抜けなかった責任をとって監事は辞任したという。

事務局長は、正規の給与・賞与に水増し分を上乗せした金額を、自身と事務局次長の給与口座に振り込んでいた。上乗せ額はコンクールなどの会場費や課題曲の楽譜制作費に付け替えて計上し、理事会と総会に報告していた。その際、伝票類を偽造していたという。

連盟の内部調査に対して事務局長は「給与の上乗せを理事長が認めた」と話したという。丸谷理事長は会見で「(上乗せを認めたことは)断じてない」とし、「深くおわびする。不正が二度と起きないよう信頼回復に全力を挙げる」と述べた。連盟の内部調査委員会は「正規の給与表には理事長の押印があったが、水増しした給与表を認めた痕跡はない。事務局長の証言には裏付けがなく、信用できない」と判断した。

連盟は「関与した職員を厳正に処分し、チェック体制を見直す」としている。コンクールなどは予定通り実施するという。

連盟は朝日新聞とともにに全日本吹奏楽コンクールなどを主催している。

音楽的素養がないが、吹奏楽を聴くのが好きで、過去に5回以上文章を記してきた者として、この不正会計を見逃すことができない。だから、吹奏楽連盟本部の動きを注視してきたが、一向に不正会計の解明や役員入れ替えの報道ないので、怒りの文章を書くことにした。

それでは、一つ一つ問題点を浮上させたい。不正会計発表当時、全国の中高生は第43回全日本アンサンブルコンテスト(3月20日福井市)の出場を目指して、ブロック大会に出場していたが、その頃から新型コロナウイルス感染症が広がり、だんだんと雲行きが怪しくなってきた。そうした中で、2月28日に新型コロナの感染拡大により、大会中止が発表された。つまり、大会中止は新型コロナの影響であって、事務局長と次長の不祥事とは関係がない。したがって、事務局長と次長の2人が不在でも全国大会開催が可能であるならば、二人合わせて推定二千万円の給与は無駄な金額と言える。さらに、読売新聞の記事では「事務局長が約7200万円、次長が約4300万円を着服」というから、まさに給与の二重取りということになる。

次は、吹奏楽の連盟本部と都道府県の収入を把握したが、この情報はネットの動画を参考にした。例えば、北海道の場合、札幌地区の加盟団体である小学校は五千円、中学校は六千円、高校は七千円、大学・職場・一般は七千円を、さらに北海道支部には、小学校は三千円、中学校は四千円、高校は五千円、大学・職場・一般は六千円を事務局宛てに納入する。そのほか、コンクール参加費として、1団体は九千円から二万円を納入するが、それらは全国一万四千団体が負担する。そして、中高生の部費は、学校からも出ていることから、一部税金が投入されていると言える。

以上の金額は、大部分が連盟本部に流れるというが、そのほかに連盟本部には、課題曲楽譜の売上、CD、DVDの売上、コンクールチケットの売上なども加算されるので、軽く億の金額を超えるという。いってみれば、事務局長と次長は、多くの子供たちが支払ったカネを懐に入れた“大悪人"であるのだ。

そもそも、吹奏楽の世界は「音楽教員の集まり」で、独特の世界であるという。だから、連盟本部(役員22名)も都道府県の理事や副理事も、ほとんどが元教員で、いわば“名誉職"と言える。だから、誰も金銭的なことには口を挟まないし、そもそも教員は金銭問題に“疎い"というから、なおさら事務局長の言いなりになる。したがって、この不正会計は“氷山の一角"というのだ。

引き続いて、全日本吹奏楽連盟の定款を見ることにする。その第5章には役員及び事務局として、

第27条(事務局)、

この法人の事務を処理するために事務局をおく。

2・事務局には事務局長1名、その他の職員をおく。

3・職員は理事長が任命する。但し、事務局長等重要な職員は、理事会の決議を経て理事長が任命する。

4・事務局長は財産の状況または理事の業務の執行について不正の事実を発見した時は、これを理事長・監事または行政庁へすみやかに報告すること。

5・職員は有給とする。

と記されている。ということは、事務局長の任命は、最終的には理事長が責任を持つことになる。そうであれば、当然のことに、事務局長の不始末は理事長の責任であるから、丸谷理事長は即刻辞任するべきである。ところが、一向に理事長辞任の報道が流れてこないのである。ここは頭を切り替え、役員総辞職し、今流行の元検察官を入れて、新役員を選び直すべきだ。

最後はついでに書くが、吹奏楽連盟と一緒に全国大会を開催している朝日新聞に対するクレームだ。不正会計の報道を聞いた時、すぐさま「朝日新聞は関係ないのか」というものであった。というのも、連盟本部の分室が朝日新聞本社の中にあり、日頃から両者は緊密に連絡しあっているので、朝日新聞記者の5人以上は事務局長や次長と飲食し、その飲食代の中には、連盟本部の「交流費」が入っていると考えたからだ。したがって、朝日新聞側は事務局長と次長の金銭感覚を知っているし、人間性も知っているのだから、朝日新聞がメディアの中で一番不正会計の情報を持っている。ところが、今日までいっさい真相究明(例えば、事務局長と次長の出身母体)の調査報道がないのだ。それこそ、双方の関係が“腐れ縁"であることが露わになったと言える。その関係を打破するため、吹奏楽連盟は朝日新聞から自立し、大改革を実施しなければ、より一段上の“吹奏楽文化"を達成することはできない。吹奏楽連盟は「新時代へ向かう」覚悟を持つべきだ。