日本も日中姉妹都市協定の見直しを

1月23日付け「産経新聞」の一面に、見出し「プラハ市長『中国信頼できぬ』ー北京と姉妹都市解消 台北と締結」という記事が掲載された。そこで、吾輩は自慢ではないが、約35年前に日中姉妹都市協定に関わったので、それなりに解説をしたい。当時、日中姉妹都市締結について、「中国が日中姉妹都市に対し、近代化への利用という経済的側面に加えて、国家間の諸問題を解決する手段、あるいは中国に不利な政策の転換を推進する力として、姉妹都市協定を位置づけようとしている」と分析した。

それでは、まずは上記記事から紹介する。

中欧チェコの首都プラハのズデニェク・フジブ市長(38)が21日、産経新聞の単独取材に応じ、北京と姉妹都市協定を解消して、今月13日に台北と協定を結んだ経緯を明かした。「中国側は信頼できるパートナーではなかった」と述べ、対中不信をあらわにした。

プラハと北京の協定は2016年に締結され、「一つの中国」原則の順守を記す条項が含まれていた。フジブ氏が昨年1月、「市協定に政治を持ち込むのは不適切」とし、条項削除を求めたのが対立の発端だ。

フジブ氏は「私は16年、野党メンバーとして協定に反対した。北京に協定の再交渉を求めたのは、18年に発足した市議会の決議を受けた措置だ」と強調した。

北京は再交渉の要請を拒否した。電子メールや書簡の問い合わせに返事をしなくなり、昨年秋に予定されたプラハ交響楽団の中国ツアーを一方的に中止した。フジブ氏は「まるで子供のいじめだ」と批判し、「話し合いもできないパートナー関係では意味がない」として協定解消を決めた。

チェコは中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に協力する覚書の調印国だ。中国重視の外交を続けてきたが、フジブ氏が北京との関係解消を外務省に相談すると、「姉妹都市は市政が決めること」との返答で、介入しなかった。チェコ側が期待した中国からの巨額投資が実現しなかったことなどが背景にあるとみられる。フジブ氏は「国民の中国観は変わった」という。

台北との協定締結は昨年3月、フジブ氏が訪台し、蔡英文総統らと会談したのが契機に。医師出身のフジブ氏は15年前、台湾で2カ月研修した。「台北とは人口規模が近く、住宅、環境など重視する政策も同じ。今月の台湾の民主選挙はわれわれと価値観を共有することを示した」と訴えた。

プラハ台北と協定を結んだ後、上海もプラハとの協力関係の解消を発表した。中国側は「悪い影響を招く」と警告しており、中国人観光客の減少も予想されるが、フジブ氏は「現在は観光客の増えすぎが問題になっている。減るのは治安や衛生面でよいこと」と意に介さない。

ということで、現在の日中姉妹都市締結数を知りたく、ネットで調べると371組あった。これを1973年の神戸市ー天津市(6月)、横浜市上海市(11月)の締結以後の件数を年別に集計すると、73年3組、74年、75年、76年、77年が無くて78年1組、79年8組、80年8組、81年12組、82年13組、83年14組、84年13組、85年13組、86年10組、87年12組、88年6組、89年7組、90年9組、91年12組、92年15組、93年18組、94年23組、95年16組、96年15組、97年17組、98年8組、99年9組、2000年9組、01年8組、02年16組、03年2組、04年16組、05年5組、06年9組、07年6組、08年4組、09年7組、10年4組、11

年6組、12年5組、13年2組、14年1組、15年、16年が無くて17年1組、18年、19年は無いとなった。

以上の締結数で特徴的なことは、89年の天安門事件以後の92年から97年にかけて、年15組以上締結していることだ。つまり、天安門事件から3年後の92年、当時の宮沢政権は天皇陛下の訪中を、中国側の対日工作(中国側は認めている)によって実現させた。これによって国際社会は経済制裁を次々と解除し、中国は経済的困窮から抜け出し、今日の経済大国に至った。その意味で、日本は日中姉妹都市締結を通して、中国共産党独裁体制に貢献したと言える。

ちなみに、我が国の自治体と多く姉妹都市締結している国を紹介すると、一番はアメリカで455(都道府県26、市区354、町村75)、次いで中国371(都道府県43、市区286、町村42)、韓国(都道府県19、市区117、町村27)、オーストラリア108(都道府県6、市区79、町村23)、カナダ71(都道府県2、市区42、町村27)、ブラジル58、ドイツ56、フランス54、ロシア47、ニュージーランド44となり、合計では1762(都道府県167、市区1289、町村306)になる。

再び、日中姉妹都市の話しに戻る。プラハのフジブ市長によると、姉妹都市協定の第3条に「一つの中国」原則順守が明記されているというが、日中姉妹都市の協定には「一つの中国」という文面はない、と記憶している。また、フジブ市長も、ロンドンなど北京が他都市と結んだ協定には、こんな条項はないという。その意味では、プラハ市と北京市との協定は、珍しいのかもしれない。

吾輩が以前から日中姉妹都市協定で気になっていたことは、交流事業の中に「科学技術」があることだ。両都市間で「協定文書」を取り交わす際、その中に文化、経済、農業、酪農、スポーツ、教育、建設技術、工業技術、医学、科学技術などと、今後の交流事業を明記する。その中で、科学技術とは縁遠い小都市が「科学技術」を記すと、受け入れが大変なのだ。例えば、コンピューター研修生を受け入れる企業が地元にない場合、他の都市に依頼することになるし、日本の技術をコピーして帰国すれば責任を取らなければならない。また、研修生が帰国直前にパソコンを無断で中国に送ることや、買い物料金を支払らわないで帰国する事案もある。だから、受け入れ自治体や企業は、それなりに大変であるのだ。

そろそろ結論を言う時がきた。つまり、日本の自治体には「中国との交流にはカネがかかり、メリットが少ない」ということで、日中姉妹都市関係を見直したい自治体があるハズだ。であるならば、もう歴史的な使命は終了したということで、交流事業を縮小・終了するべきだ。昔の首長の中には、中国に迷惑をかけたという“贖罪意識"から姉妹都市協定に至った自治体もある。でも相手は、靖国参拝尖閣諸島東シナ海、日本人拘束など、すぐに日本と問題を起こす共産党独裁国家である。

要するに、言論の自由もない、新彊ウイグル自治区での人権抑圧という、暴政の中国共産党一党独裁体制に貢献する意味がなくなったのだ。今夏には、習近平国家主席国賓としてもてなすという話しがあるが、もう偽りの「日中友好」演出を止めるべきだ。それよりも、自由と民主主義を求める台湾(締結33組)や、東南アジアとの姉妹都市締結を推し進めるべきだ。