台湾総統選後の中国大陸の幾末

1月11日に行われた台湾の総統選挙は、事前に現職の民主進歩党の候補・蔡英文の当選が確実であったので、選挙結果には「ただただ良かった」としか考えていなかった。そうした中で昨夜、一人の友人から「夕刊フジ」がFAXで送られ、読んでみると非常に説得力があった。寄稿者はジャーナリスト・長谷川幸洋で、題名は「台湾総統選が中国へのブーメランに」である。

台湾の総統選(11日投開票)で、独立志向の与党、民主進歩党蔡英文総統が、親中路線を掲げた最大野党、国民党の韓国瑜・高雄市長に大差をつけて圧勝し、再選を果たした。

同時に実施された立法委員(日本の国会議員に相当)選挙でも、与党が過半数を獲得した。蔡政権は中国の「一国二制度」提案を拒否し、対中抵抗路線を貫くだろう。

今回の勝利をもたらしたのは、何か。

言うまでもなく、香港デモだ。台湾の人々は、香港が中国に対して絶望的な抵抗をしている姿を見て、自分たちが親中路線を選んだら「いまの香港が明日の台湾になってしまう」と危機感を強めた。言い換えれば、蔡氏を勝たせたのは、中国の習近平国家主席にほかならない。

この展開を見て、私は「革命を輸出し、世界革命を達成する」という左翼の壮大な妄想を思い出した。最初にソ連が、次に中国が共産主義革命を成功させた。ソ連スターリンも、中国の毛沢東も「次は世界革命だ」と野望を膨らませた。

共産主義運動の万国共通歌「インターナショナル」には、次のような一節もある。「暴虐の鎖断つ日 旗は血に燃えて 海を隔てつ我等 腕(かいな)結びゆく」。ソ連も中国も、自分たちと同じ左翼独裁体制が世界に広がる日を夢見ていた。

ところが、実際に起きたのは何だったか。

「海を隔てて、連帯を強めた」のは「独裁と抑圧」の側ではなく、真逆の「自由と民主主義」の側だった。ソ連崩壊後、生き残った中国共産党政権は革命を輸出したわけでもない。「反革命=自由と民主主義」を輸出したのである。

この流れは止まらない。

それどころか、ブーメランとなって、中国に戻っていく可能性が高い。兆候はすでに表れている。中国共産党内部に反乱の兆しがあるのだ。それは、どこで見えるか。

昨年11月、中国が新彊ウイグル自治区で100万人ものウイグル人を強制連行し、収容所に閉じ込めている実態が世界で報じられた。きっかけは、米紙ニューヨーク・タイムズと、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の報道である。

とりわけ、ニューヨーク・タイムズは、中国共産党指導部メンバーから入手した内部告発文書を基に報じていた。私が注目したのは、告発の動機である。

同紙によれば、告発者は「習氏を含めた党指導者たちが、大量強制収容の犯罪から逃げおおせないようにしたい」と考えて文書を提供した、という。

つまり、中国共産党の内部に習路線に反対する勢力が存在している証拠にほかならない。彼は黙って眺めるだけでなく、行動した。表立った反乱とは言えないが、少なくとも権力内部で暗闘があるのは、確実ではないか。

今回の敗北で、台湾政策を統括する中国国務院の台湾事務弁公室が「責任を追及される」という見方もある。習政権の強権的性格を考えれば、ありそうな話しだ。どんどん、やればいい。左翼政権はそうやって倒れていくのだ。

以上の寄稿は、以前から吾輩が主張してきた内容と同じであるが、非常にコンパクトにまとめられている。さすが、文章作成の達人である。吾輩の主張も、ウイグル民族に対する弾圧から、中国共産党独裁体制は崩壊するのではないか。また、最後は自由と民主主義体制が勝利し、最後は共産党独裁体制は崩壊すると主張してきた。逆に言うと、自由と民主主義を信じる人々は、絶対に共産党独裁体制に負けないということだ。そういう意味では、今回の蔡英文総統の再選は、“中国大陸の解体を早めた"と言える。

ところで、長谷川氏は以前「東京新聞」に在籍していたが、寄稿者の経歴に「東京新聞」ということが記されていない。おそらく、左翼メディアと言われる「東京新聞」を退職して、経歴に「東京新聞」を入れることを避けたようだ。その意味では、吾輩と同じ心境と言える。