中露のスパイ活動の一端

我が国は、以前から「スパイ天国」として、世界中に知れ渡っている。そうした中、先週発売の週刊誌「ニューズウィーク日本版」(11・5)に、静岡大学教授・揚海英(中国内モンゴル出身)の寄稿「中国があざ笑うスパイ天国ニッポン」という記事が掲載されていた。

今年1月16日午後1時。私は東京・国会議事堂に近いある高級ホテルのカフェにいた。他人の会話を盗み聞きする気はなかったが、隣の席から中国人特有のイントネーションでまくし立てる日本語が聞こえてきた。中国人女性と日本人の初老男性が、コーヒーとケーキを前にして真剣な表情でやりますしている。

「とにかく自民党の有力な議員たちに働き掛けていただきたいです」と、女性は満面の笑みで迫る。「わしはもう引退しているので、そんな力はないよ」と、男は応じる。

「ぜひ、習主席を新しい時代の最初の国賓として呼んでほしいです」

「それは難しいだろう。日本はもうトラップさんを呼ぶと決まっているし」

「主席の訪日に向けて、良い雰囲気を日本国内でつくってほしいです」

女性は男の手に自分の細い指を乗せて、優しい声でねだっている。「もっと詰めの話をしょう」と男が誘うと、女性もにっこりとうなずく。しばらくしてから、2人はエレベーターに乗ってホテル内の客室階へと消えていった。ニ流スパイ小説さながらのシーンが眼前に展開されているのを見て、私は茫然とした。

これが「スパイ天国」の東京の現実だ。日本の権力機関の目の前で、白昼堂々このようなドラマが演じられている。女性はある引退した政治家に接近し、彼を通じて習近平国家主席がトラップ米大統領よりも先に日本へ国賓訪問できるよう政界工作をしていたようだ。1人の女性スパイの暗躍でどれほどの政治的効果が生じたか不明だが、これが東京を舞台とした国際政治のワンシーンであることは間違いない。

〈北大教授拘束でめ対応は後手に〉

6月7日午前8時頃、皇居から近い東京駅の上空を奇妙なドローンが飛んでいたのをパトロール中の警察官が発見。操縦していた男を事情聴取した結果、北京市交通局の50代職員だったことが判明した。日本側は任意取り調べ後、起訴せずに釈放したが、判断が甘いのではないか、という批判が識者から出た。

というのも、北京市交通局は中国政府の肝煎りで整備中の中国版GPS「北斗」の開発に関わっている。北斗と連動して稼動する中国衛星の数は18年にアメリカ製を抜き、世界の3分の2を超す国の上空で情報収集している。北京から来たこの男も恐らく、北斗用の正確な地理情報を入手しようとしたとみられる。

日本がこのように怪しい人物の暗躍を許してきたのは、政界の親中派を中心とした中国との関係改善ムードづくりと無関係でない。しかし中国は日本の善意に善意で応えない。最近、発覚した北海道大学教授の拘束劇が彼らの冷酷さを物語っている。

北大は旧帝大の1つで名門大学として名高い。拘束された法学部教授は中国近現代史の専門家で、次世代を担うホープの1人と見なされてきた。9月3日から中国を訪れ、約2週間滞在した後、北京市内で拘束されたと報じられている。

今回も日本政府の対応は後手に回っている。約1カ月もたってから情報公開し、救出への積極姿勢も見られない。2015年以降、スパイの嫌疑で中国によって拘束された日本人は計13人に上る。だが、日本政府はどんな努力をしているのか国民に説明してこなかった。

日本政府は北朝鮮による日本人の拉致問題を重視している。主権国家として当然だが、明確な証拠も情報開示もしない中国政府に監禁されている同胞救出には冷淡な態度を続いている。国際社会ではとても理解されないだろう。

以上のように、スパイ活動とは、何も隠密に行うものだけではなく、白昼堂々と行われることもある。そして、日本の国会議員の中には、スパイ活動の一端を担わされてことを理解できない、脇の甘い人物もいる。それにしても、ある引退した初老男性の「元政治家」とは誰であるのか?おそらく、寄稿者は人物を知っているので、既に警視庁公安部は「元政治家」をマークしていると思う。

引き続き、ロシアの諜報機関であるKGB(旧ソ連・国家保安委員会)のスパイ活動の一端について記す。メールをくれたのは、以前ロシアに駐在した友人である。

某日本人外交官から聴いた話しであるが、旧ソ連時代の「ハニートラップ」の実態です。それは、外交官がペテルブルクに居住していた当時の話しです。

外交官は、外務省の職員(ロシア語族ではない)で、20代半ばの独身男性です。ペテルブルクの住居は、ソ連側から指定された建物で、前任者から引き継ぎました。住居は5階建て、1階と5階にロシア人(KGB関係者)が入居して、これに挟まれるように2階〜4階には、日本人が入居していました。

ある日、外交官の居住の玄関ベルがなり、出てみると若いロシア人の女性が、お酒の入ったと思われる袋を持って立っていた。その後、外交官と女性は次のような対話をしたという。

女性「ここは米国人のAさんの家でしょうか」

外交官「違います。私の家です」

女性「それはおかしいですね。米国人のAさんの家のはずです」

外交官「いいえ。勘違いでは…」

女性「それはともかく、せっかく来たので、一緒にお酒でも飲みましょう」

と言いながら、女性は強引に家に入ろうとしたので、外交官はこれを押し止めて、追い返したという。

要するに、KGB側は「この外交官は独身だし、ダメ元でやってみるか」ということで、若い女性に押し掛けさせた。

このほか、冷戦時代に長くソ連勤務した外務省職員(ロシア語族)の話しでは、「KGBは、女性に興味を示さない男には、男性を接近させる」という手段を使った。また、女性に興味がなければ、ホモの可能性あるということで男性を接触させてきた。要は「単純なオツムのロシア人らしい発想」ということであった。

ついでに報告すると、私にはハニートラップはありませんでした。残念です(泣)。

このメール、面白いので今まで取っていた。いずれにしても、ハニートラップという手段は、ロシア諜報機関の専売特許で、これまで世界各国の高官が引っかかった。どの国でも高官は、スパイ工作に対しては、防衛本能が必要であるのだ!