地方銀行の未来は“真っ暗闇" であるのか

一昨年の11月16日に、「日本の金融機関に前途はあるか」という文章を作成したが、その後の動向も悲観的なものが多い。特に地方銀行は、悲観的な報道が多く、まさに“冬の時代"に突入した感じだ。そこで、新刊書「地銀波乱」(編者=日本経済新聞社)を読了したので、まずは地方銀行の実態から押さえたい。

○全国の地銀は106行あるが、このうち貸出金の金利金融商品の販売手数料でみた本業損益では、およそ半分の52行で2期以上も連続して赤字になった。さらに23行は5期以上も赤字が続いている(2017年度)。

○地銀の行員数は、2018年3月末時点で17万4千人あまりで、01年と比べて17%減った。地銀は行員全体の2〜3%を新たに補充する必要があるが、内定者の辞退が続出している。また、ある地銀では、3年勤めた同期の2割が辞めている。

○地銀の貸出金残高に占める本拠地以外向け融資の比率は、2017年3月末時点で34・8%。右肩上がりで伸びており、2018年3月末は過去最高の35%超に達したもようだ。地銀の貸出金残高は260兆円で、そのうち90兆円強は地元以外で融資している計算になる。

○2018年3月の銀行(信金を除く)のアパート融資残高(日銀調べ)は23兆円。リーマン危機直後の2009年と比べ約2割増えた。地銀のシェアは5割。すでに残高も減り始めた大手銀行とは対照的に増え続けている。

○国内銀行91行の年間給与ランキング(万円)を見ると、中央値は612。1位・三井住友銀行=810、2位・スルガ銀行=800、3位・東京スター銀行=796、ワーストは91位・島根銀行441である。

以上の実態を知ると、如何に地銀の置かれている状況が厳しいかが解る。本書でも触れているが、地銀は地方出身者のエリート就職先として、昔は大学を出た後に県庁やテレビ局、電力会社などと肩を並べる有力な就職先だった。ところが、現在では有識者が「今の地銀はかっての石炭産業を見るようだ」と述べるほど没落の一途にある。

さらに、今年2月に金融庁で開かれた会議では、地銀の“人材難"が話題に挙がったという。具体的に書くと、「融資と有価証券という銀行の資産の質が劣化していることも問題だが、人の質が落ちていることがもっと深刻だ。優秀な人材が集まらなければ持続性を失う」というのだ。昔の十八銀行(長崎市)の行員は、県最大の繁華街・思案橋で、社章をつけて歩けるのは「県庁職員と十八銀の行員だけ」というが、もう昔話しになった。

また、吾輩のことを書くと、もう20年前か、左翼的な思考の後輩が「銀行は、どんどん衰退する産業ですよ。カネ貸しに未来があるハズがない」というのだ。当時、堅い企業ということで、銀行株を一番買っていたが、その後の株価変動は後輩のいう通りになった。そして今、金融とITの融合や人工知能(AI)の進展で、銀行の不要論すらささやかれているという。

ここからは、吾輩の疑問である。日銀によると、2017年度は1%だった最終赤字の地銀が、今後は増加の一途をたどり、28年度には58%に達するという。そうであるならば、地銀はこのまま没落した産業になるのか、それとも息を吹き返して、それなりの産業として存在するのかが解らないのだ。

さらに、日銀が異次元緩和に乗り出した2013年4月以降、さらに金利低下が加速し、16年2月にはマイナス金利政策、同年9月には「長短金利操作」を導入し、長期金利は0%程度に誘導されるようになった。そのためか、今問題になっているスルガ銀行は、融資総額3兆1500億円のうち約2兆円を、利益率が高い投資用不動産融資を手がけた。その内情は、ずさんな融資審査であつたり、果てはデート商法詐欺まがいの融資であった。また、地銀の半数超にあたる58行が16〜17年度にかけて、振り込みや送金などに伴う手数料を引き上げるなど、収益向上に務めている。

そして、世界の先進国を眺めると、低金利やマイナス金利が常態化している。かっては特殊な出来事であったが、今では長期的な「構造問題」とすら見方が増えてきたという。そうであれば、かっては預金を集め、国債で運用すれば一定の利益を手にできたが、今後は有り得ないビジネスモデルというのか。

このほか、銀行員の転職は平成21〜30年度の10年間で7・14倍に増え、全職種の3・23倍に比べ格段に多い。それは、超低金利の長期化による利ざやの縮小を背景に、銀行の収益力が悪化した影響であるが、この収益悪化は長期化するのか。もしも、今後10年も続くのであれば、もう優秀な学生が地銀に就職することはないが、超低金利やマイナス金利が一時的な政策であるならば、地銀に就職することは悪い選択でない。そして、投資家も一時的な政策であるならば、地銀に投資することは悪い判断ではない。

要するに、地銀の将来像が一向に見えてこないのだ。だから、この文章を書いたが、いつになったら見通すことができるのか?