女系天皇を支持する者たちの思惑

やっぱり、産経新聞は日本に必要なメディアだ。昨日の産経新聞一面下「産経抄」に、次のような文章が掲載された。

「国民統合の象徴である天皇を男性に限定する合理的理由はどこにもない」。共産党志位和夫委員長は最近、党機関紙でこう語るなど、女性・女系天皇に賛意を示している。この発言について、皇室制度を容認することで党のソフト化路線を強調しているとの見方があるが、果たしてそうか。

共産党はもともと、長年にわたって皇室制度の「打倒」「廃止」を掲げていた。「2004年綱領」からは「その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきもの」と柔軟姿勢も見せているが、根本的に君主制とは相いれない。

本来、皇室を廃絶したいはずの彼らが、女系天皇に賛成するのはなぜか。共産党に近く、皇室と民主主義は両立しないと主張した憲法学者の故奥平康弘氏は、女系天皇の誕生にこんな「期待」を表していた。「天皇制のそもそもの正当性根拠であるところの『萬世一系』イデオロギーを内において侵蝕する」(月刊『世界』平成16年8月号)

126代の今上陛下に至るまで例外なく、父方の系統に天皇を持つ男系で皇位が継承されてきた伝統を変えてしまえば、天皇は正統制と根拠を失うというのである。また、世襲の皇室制度は憲法の基本的原理と矛盾するとの立場の憲法学者、横田耕一氏も次のように述べている。

女系天皇を認めるということは、社会的に天皇の持つ国民統合力を弱めるように働く」(16年2月5日の衆院憲法調査会小委員会)、「女系天皇にした場合には権威ある天皇というものは、恐らく復活しない」(17年5月31日の政府の皇室典範有識者会議)

共産党女系天皇容認論には、あわよくば皇室制度の衰退に結びつけたいとの下心があるとみるのは、邪推だろうか。

吾輩にとっては、当たり前のことを記しているが、多くの日本人はまだ気がついていないようだ。メディアの世論調査では、男系継承の伝統を変えることになる女系天皇に、賛成が過半数を超えている。そして、産経新聞世論調査(5月14日付け)でも、女系天皇について「賛成」との回答が64・2%にも達し、一方、女性天皇女系天皇の違いに関して「理解していない」との回答が過半数もある。

我々は、この結果をどのように考えれば良いのか。つまり、日本人は、それなりに女性天皇女系天皇の違いを理解していると見るべきなのか。いや、違うと思う。つまり、左翼的思考の者は、女系天皇であれば、いずれ「天皇制」(この言葉は左翼用語という)の廃止に繋がることを期待して、女系天皇を支持している。

最近、左翼系メディアが、いかにも皇室の将来を心配しているような素振りで、「持続可能な皇室」という題名で記事を掲載していた。その中身は、ご多分に漏れず、女性・女系天皇を支持する内容であり、その意図するところは、記事の裏に隠れている。

そのように感じるのは、昔、左翼的思考の者たちから散々話しを聞いているからだ。それらの者たちは、一応に、

○民主主義になじまない。

○差別を認め、その解消に阻害になる存在。

○皇室維持に国費を投入している。

○戦前の戦争に加担した存在。

などと話すのだ。だから、その後継者である者たちが書く「持続可能な皇室」という解説記事を見ると、当然のように吾輩などは“眉唾"になるのだ。

だが、「天皇制反対」も立派な意見である。それを考えると、姑息な方法で記事を書くのではなく、昔の左翼勢力のように正々堂々と「天皇制反対」と書くべきである。そして、そういう解説記事があっても良いと考える。