JR北海道に“乗りたい列車" を走らせたい

久しぶりに、JR北海道のことを書く。何故なら、昨日の「産経新聞」【産経抄】に、次のような文章が掲載されていたからだ。

さあ、北海道へ行こう。という気分が、今ひとつ出てこない。昨年の北海道胆振東部地震の影響で落ち込んだ観光産業を支援しようと、観光庁が音頭をとっている「元気です北海道」キャンペーンも絶賛開催中なのだが、中年鉄道愛好家には、どうも食指が動かない。

かつて北の大地は、鉄道王国だった。昭和の昔、函館本線蒸気機関車C62が重連で急行「ニセコ」を牽いた雄姿は、今や伝説となった。平成になってからもブルートレイン北斗星」と大阪ー札幌間を一昼夜かけて結んだ「トワイライトエクスプレス」が妍を競った。

抄子も用もないのに年に1度は、列車に乗って登別や札幌、時には網走まで足を延ばしていたが、3年前に新幹線が新函館北斗まで開通し、本州と直通の寝台列車が全廃されてからは、仕事がなければ、とんと行かなくなった。乗りたい列車がなくなったのだ。

おまけに今月末には、辛うじて残っていた車内販売も道内からすべて消える。函館から特急「スーパー北斗」に乗り、長万部から積み込まれた「もりそば」を海を眺めながらすする至福は、もう味わえない。

北海道だけでなく、全国の在来線で車内販売がどんどん廃止されている。新幹線や観光列車を除いて採算が取れなくなったためで、JR九州の一部の特急では、車内販売員どころか車掌も乗っていない。

少子高齢化と東京一極集中の加速で、ローカル線を多く抱えるJR各社はいずれも苦戦を強いられている。赤字の車内販売を維持する余裕がなくなった事情もわかる。それでも旅情を支えてきた名脇役が、このまま消えさるのはなんとも惜しい。観光には数字で計れない要素も必要だ、とブツブツ言うのは、中高年の愚痴にすぎぬだろうが。

北海道では「産経新聞」が読めないのと、最近のJR北海道の現状を把握するために紹介した。確かに、北海道の鉄道の魅力がどんどんなくなってきている。そこには当然のごとく、JR北海道の経営不振によって、新しい企画を提案しても、何ら実行出来ないという現実がある。

そもそもJR北海道は、北海道新幹線の2030年度札幌延伸時まで、どのような方針で経営して行くのかが、さっぱり見えない。見えないというよりも、カネがないので新たな経営方針を提示出来ないのだ。テレビニュースで、JR北海道の島田修社長が、厳しい経営実態を説明している姿を見ると、ついつい同情してしまう。一方、役立たずの道会議員が、島田社長を追求している姿を見ると、無性に腹が立ってくる。

さて、我が輩は昔から、JR北海道の経営には「北海道開発費」を投入するべきだと訴えてきた。北海道新聞も昨年12月25日の社説で、

ー〜本来、国の責任で行うべき国土の保全を民間会社任せにしていいのか疑問を禁じ得ない。

そもそも、開発予算には慣例で鉄道関連事業が含まれていない。

鉄道は災害時の物流でも重要な役割を果たす。こうした観点からも、地域の交通網のあり方は道路や空港、港湾ど一体で考えなければならない。

日高線の護岸改修も含め、開発予算に鉄道関連事業を組み込むことを検討すべきだ。ー

と主張している。

それでは、なぜ故に「北海道開発費」という国費が投入出来ないのか。新聞報道では、

○今の制度では、地域鉄道への支援しか認められておらず、JRは対象外。

○国のJR北海道への財政支援は20年度までの時限措置であり、21年度以降も支援を続けるには、旧国鉄債務処理法の改正が必要。

などと説明している。

しかし、思い出して欲しい。北海道の道路や鉄道建設では、多くの囚人が犠牲になっていることを…。例えば、網走・旭川をつなぐ「北見道路」は、囚人212人の犠牲者を出して1891年(明治24年)に開かれ、鉄道の「常紋トンネル」は囚人百数十人の犠牲者を出して1913年(大正2年)に開かれた。そのような背景を考えると、簡単に廃止路線に挙げてもらいたくない。また、昔も今も、交通網の建設・維持というインフラは、最も重要な施策であることを理解して欲しい。

だからこそ、我が輩は以前から「北海道開発費」の国費投入を訴えている。それが現実化しないのであれば、名称を変えて「札幌開発費」とか、「道央開発費」というべきだ。これは冗談であるが、法律がおかしければ改正すればすむことである。これでは、10年後、20年後の北海道の鉄道は、北海道新幹線と札幌、旭川、帯広、函館をつなぐ路線しか残らない。そして、そのほかの路線については、「法律で北海道開発費が使用出来なかったので廃止した」ということになりかねない。

最後は、JR北海道に対する要望だ。人口減少が激しい北海道では、魅力的な列車を走らせて、内外の観光客を呼び込むことが、最も重要な道しるべだ。どんな形態でも良いから、どんどん魅力的な列車を走らせて欲しい。座して待つのではなく、攻めていれば、必ずや明るい未来が開けてくると思う。頑張って、欲しいものだ。