ペンス米副大統領の対中演説の歴史的意味

ペンス米副大統領は10月4日、米シンクタンクのハドソン研究所で約50分間、対中国政策についての演説を行ったが、この演説は第二次世界大戦後のチャーチルによる冷戦の始まりを告げる「鉄のカーテン演説」に譬えらるとの報道があった。それ以後、我が輩はこの演説の全文を読みたいと考えていたところ、昨日発売の「Hanada」(1月号)が全文を掲載したので、要約して紹介することにした。

中国政府が政治、経済、軍事的手段とプロパガンダを用いて、米国に対する影響力を高め、米国国内での利益を得るために政府全体にアプローチをかけているということです。〜中国はまた、かってないほど積極的にこの権力を利用して影響力を及ばし、わが国の国内政策や政治活動に干渉しています。

1949年に中国共産党が政権を握った直後から、共産党は独裁主義の拡張政策を追求し始めました。ともに戦ってからわずか5年後、朝鮮半島の山谷で、我々がお互いに(敵として)戦ったことを考えると驚くべきことです。

ソ連の崩壊後、我々は中国の自由化が避けられないものと想定しました。〜これまでの政権は、中国での自由が経済的だけでなく政治的にも、伝統的な自由主義の原則、私有財産、個人の自由、全家族に関する人権を新たに尊重する形で、あらゆる形で拡大することを期待してこの選択を行ってきました。しかし、その希望は達成されませんでした。自由への夢は、中国人にとっては未だ現実的ではありません。

最悪なことに、中国の安全保障機関が、最先端の軍事計画を含む米国の技術の大規模な窃盗の黒幕です。〜今日の中国は、人工島に建設された軍事基地に、高度な対艦ミサイルと対空ミサイルを配備しました。

中国政府は2018年9月、中国最大級の地下教会を閉鎖しました。〜中国はまた、仏教も厳しく取り締まっています。過去十年間で、百五十人以上のチベットの僧侶が、中国による信仰と文化への弾圧に抗議するために焼身自殺しました。そして新彊ウイグル自治区では、共産党が政府の収容所に百万人ものイスラム教徒のウイグル人を入れ、24時間態勢で思想改造を行っています。

6月には、中国自身が「プロパガンダと検閲通知」と題する機密文章を回覧しました。戦略を示したのです。それには彼らの言葉で、中国はアメリカ合衆国で「正確かつ慎重にストライキを行い、打撃を加え、異なる国内グループを分裂させなければならない」と述べていました。中国政府は、その目的を果たすために米国人の対中政策認識を変え、秘密工作やフロントグループを動員し、プロパガンダ放送を流しました。

中国政府高官もまた、中国での事業を維持したいというビジネスリーダーの願望を利用して、我々の通商措置を非難するように働きかけています。最近の例では、米国の大企業が米国政府の政策に反対する発言をしなければ、中国はその企業の事業許可を認めないと脅しました。中国政府は現在、中国で事業を展開する米国のジョイントベンチャーに対し、彼らが言うところの「党組織」を自社内に設置することを要求しており、その結果、共産党に雇用や投資に関する決定に対して発言権を与えるとともに、おそらく拒否権を与えることになります。

中国共産党は米国、そして世界中のプロパガンダ機関にも数十億ドルを費やしています。中国国際放送局は現在、米国の主要都市を中心に三十以上の放送局で中国政府寄りの番組を放送しています。

中国共産党が検閲文化を助長しようとしているのはメディアだけではありません。同じことが学界全体でも起きています。〜メリーランド州立大学で最近、中国人学生が自分の卒業式でこう言ったのです。アメリカの「言論の自由の新鮮な空気」と。共産党機関紙は、すぐに彼女を非難しました。彼女は、中国の厳格に管理されたソーシャルメディアで猛烈な批判の犠牲者となり、故郷の家族は嫌がらせを受けました。

中国の支配者たちが方針を変更し、数十年前のこの関係の始まりを特徴づけた改革と開放の精神に戻ることはできます。〜中国との関係が公平、相互的、そしてお互いの主権の尊重が基礎となるまで、我々は態度を弱めません。

以上、演説の一部を紹介しました。どうですか、この演説が、後世の歴史家から新たな「鉄のカーテン演説」と言われることになると思いますか。いずれにしても、米国は中国に対峙する姿勢を示した以上、今後の米中貿易戦争の行く末にも関心を持ちたいものです。