関西空港と南海トラフ巨大地震

関西空港は、台風21号(9月4日)の高潮で第一ターミナルなどがある「1期島」が冠水して、全滑走路を閉鎖した。このニュースを聞いた我が輩は「この程度の高潮で滑走路が冠水なら、マグニチュード9クラスの南海トラフ巨大地震に襲われたらどうなるのか。おそらく、滑走路は2〜3㍍の大津波に覆われ、多くの人たちが流されるのではないか」と想像した。

その時の冠水から1ヶ月、新聞や雑誌は今回の災害をどのように検証するのかと注目してきたが、地下の電源設備などが浸水した理由や、約八千人の利用者や空港で働く人たちが取り残された背景などを解説しただけであった。つまり、間近に起こるであろう南海トラフ巨大地震に対する対策・解説は全くないのだ。なぜ故に、東日本大災害よりも被害が大きいと予想(死者数33万人)されている巨大地震に対する解説がないのかと考えてしまう。

それでは、関西空港の現状などについて、雑誌「週刊東洋経済」(9.22)が触れているので紹介したい。

関西が開港したのは1994年。伊丹(大阪国際)空港の騒音問題などを受け、旅客便、貨物便の両方で24時間運用を可能にすべく、空港すべてが人工島から成る世界初の海上空港として建てられた。A滑走路と第一ターミナルビルのある1期島と、B滑走路と第2ターミナルビルのある2期島(2007年完成)に分かれている。

ただ、海上空港ゆえの課題も多かった。関空は水深18㍍の軟らかい地盤の上に建てられており、開港当初から地盤沈下のおそれが指摘されていた。1期島はこれまでに3㍍強沈み、今も年間6㌢㍍のペースで沈下している。

今回大きく浸水したのが、その1期島だ。A滑走路や駐機場のほぼ全域が冠水し、深い場所で約40〜50㌢㍍に及んだ。さらに第1ターミナル地下の従業員エリアや機械室などにも水が流れ込んだ。

関空も対策は取っていた。04年には「50年に1度」に相当する高波にも耐えられるよう、護岸壁を海面から約5㍍の高さまでかさ上げ。61年の第2室戸台風で記録した大阪湾における過去最高の潮位293㌢㍍を想定したという。だが今回は、台風の通過と満潮時刻が重なるなどして、それを上回る329㌢㍍を観測した。

というわけで、今回の災害もまたまた「想定外」ということのようだ。それにしても、こんな所に空港を建設したことによる脆弱性が、今頃になって明らかになってきた、という感じを受ける。しかし、海上空港が開港した以上、関空利用者などは日々それなりの心構えが必要である。

例えば、南海トラフ巨大地震を感じたら、直ぐに対岸に避難を開始する意識を日頃から持つべきだ。なんと言っても、A滑走路のある「1期島」は開港以来3・5㍍地盤沈下し、今でも年間約6㌢㍍のペースで沈下しているので、あと10年もすれば60㌢も沈下する。さらに、今回の台風では、大阪湾の潮位は過去最高の3・29㍍に達し、一部護岸も破損している。このほか、内閣府徳島県阿南市津波高を、県の想定の5.4㍍の3倍近い16.2㍍としている。それを考えると、国もマスコミも、もう少し日本国民に対して、危機意識を持たせるべきではないのか。