産経新聞で紹介された大著「裏切られた自由」

本日の産経新聞に、第31代米大統領フーバーの大著「裏切られた自由ーフーバー大統領が語る第二次世界大戦の隠された歴史とその後遺症(上・下)」(草思社・各8800円)の書評が掲載された。書評の内容に共感したので、紹介することにした。それでは、書評を転載させてもらいます。

<封印されてきた戦争の真実>

本書は31代米大統領、ハーバート・フーバーが20年の歳月をかけて完成させた第二次世界大戦の回顧録です。原書は一千㌻を超える大著で、日本語版では上・下巻に分けての刊行になりました。

スターリンと手を組んだルーズベルト外交を「自由への裏切り」と断罪した本書は、2011年にフーバー研究所から刊行されると大きな反響を呼びました。日本語版も刊行以来、事前の予想をはるかに上回るペースで版を重ねています。

フーバーが本書の刊行を決意したきっかけは、真珠湾攻撃のニュースでした。フーバーは日米開戦の翌日、友人に宛てた手紙の中で「日本というガラガラヘビに(米国が)しつこくちょっかいを出した結果、ヘビが咬みついた」という表現で、米外交を批判しています。さらに戦後、東京でマッカーサーと会談した際には「日本との戦いは狂人(ルーズベルト)が望んだこと」という点で合意しています。このように、本書の記述には、従来の戦勝国史観に根本的な見直しを迫る視点が多数含まれています。

それは、あの戦争における日本側の立場を擁護することにもつながるのですが、強調しておきたいのは、フーバーは決して日本贔屓の政治家ではなかったという点です。彼の経歴や政権担当時のスタッフを見れば、むしろ逆であった可能性が高いでしょう。

しかし、そのような人物の著作であるからこそ、本書の記述には大きな価値があります。戦後封印されてきた歴史の真実がここにあります。

(草思社編集部 碇高明)

以上の書評を読むと、第二次世界大戦の原因もある程度理解できるし、現在の国際情勢に対する米国の悩みも良く分かる。つまり、戦後世界の東西冷戦(旧ソ連による東欧諸国占領)、中国の台頭(共産党政権の樹立)、そして危機的な北朝鮮情勢(朝鮮半島北部の旧ソ連占領)は、いずれもルーズベルト外交の失敗が招いている面があるからだ。そのツケを、現在の米国が背負っていることを考えると、米国の悩みが深いことがよく理解出来る。

また、日本もルーズベルト外交の成果である「ヤルタ密約協定」によって、旧ソ連南樺太と全千島列島を軍事占領された。その結果、どうなったか。戦後、日本は北洋漁業南千島での漁業(昭和15年の総水揚量は26万トンで、北海道の実に半分)を失い、オホーツク海での自由航行が不可能になった。さらに、目の前の千島列島には、ロシア軍約3500人が駐留し、地対鑑ミサイルが配備されている。この背景には、対日牽制のほか、米国を牽制するための弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)を常駐させていることが挙げられる。即ち、オホーツク海は、ロシアに聖域化されているのだ。

それにしても、素晴らしい書物であるが、高額であることと、ページ数を考えると、手に取ることに二の足を踏んでしまう。しかし、現在の国際情勢を考えると、無視できる書物でもない。悩ましい大著が出版されたものだ。