北朝鮮情勢と日本の新聞社説

本日の「産経新聞」を読んでいると、我が輩と同じ想いの論調に出くわした。そして、この記事を北海道の友人たちに、届けたいと思った。何故なら、北海道では「産経新聞」を購読できないと聴いているからだ。それでは、さっそく作家・ジャーナリストの門田隆将氏(59歳)の記事「新聞に渇!」を全文紹介する。

これほどの政治ショーは滅多に見られるものではない。国の生き残りを懸けた、まさに息を呑む駆け引きである。チキンレースの末に米軍の軍事作戦が現実味を帯びてきた年末以降、案の定、北朝鮮の最高指導者、金正恩氏は韓国を使ってアメリカの動きを封じる作戦に出た。

「韓国との対話を続いている間は、米軍の攻撃はない」という確信の下での揺さぶりだ。果たして平昌五輪に悠然と現れたのは、金正恩氏の妹で、実質ナンバー2の金与正氏だった。そして、彼女は兄の親書を文在寅大統領に手渡し、南北首脳会談を持ちかけたのだ。

度重なる経済制裁で、北は悲鳴を上げている。しかし、あとわずかで悲願の核ミサイル開発が成就する。北が欲しいのは、四半世紀に及ぶ闘いの末の「完成までの少しの時間」なのだ。つまり南北対話という言葉は、そのまま「核ミサイルを完成させる」と同義語なのである。

私は、日本の新聞がこれをどう書くのかに注目した。それは、最も大切な「国民の命」を、新聞がどう捉えているかを教えてくれるものでもあるからだ。

<南北の首脳会談を必要としているのは北朝鮮である。そこを見誤ると、核を温存したまま国際包囲網を突破しようとする北朝鮮に手を貸すことになってしまう>(毎日11日付社説)

<看過できないのは、北朝鮮側に直接、核開発の放棄を求めなかったことだ。(略)米朝対話に委ねるのではなく、自らが非核化を迫らねばならないことを、文氏は認識すべきである>(読売同社説)

<拙速に南北対話を進めるのは、国連から制裁を科されている正恩氏に救いの手を差し伸べるに等しい>(産経同主張)

各紙は厳しく対話路線を非難した。しかし、朝日は違った。

<北朝鮮のねらいがどうあれ、南北の指導者による直接の話しあいは本来、あるべき姿である。同じ民族同士が少しでも和解を進め、朝鮮半島の根本的な対立の構図を変えていく努力を重ねることは望ましい>(同社説)

この期に及んでも、朝日だけは対話の重要性を強調した。建前と綺麗事、そして偽善は、新聞の専売特許だ。しかし、ことは日本国民の「命」にかかわる大問題である。北の核ミサイル完成をあらゆる手段で防がなければならないときに、対話で朝鮮半島の非核化が生まれると本当に思っているのだろうか。

そう信じているとしたら、これほどおめでたい話はないし、また、思ってもいないのにそんなことを書いているのだとしたら、これほど無責任で、読者をバカにした話もない。

ネットの浸透と共に、部数が猛然と減り続ける新聞業界の中で、生き残るのは「現実」を見据えたものだけになるだろう。平昌を舞台に繰り広げられる政治ショーは、私たちにとって新聞というものを見つめ直すまたとない機会ともなっている。

これまでも、随分と朝日新聞を批判してきたので、今回は有識者の見解を紹介しました。