今こそ、日本にも情報機関を!

本日の産経新聞に、注目する記事があった。ロンドン特派員の岡部伸(著書=「消えたヤルタ密約緊急電ー情報士官・小野寺信の孤独な戦い」、新潮選書)のインタビュー記事で、相手は英外交シンクタンク「ヘンリー・ジャクソン」アジア研究所長のジョン・ヘミングス氏である。

この記事の見出しは「日英安保協力 中露へ圧力ー『開かれた秩序』維持に有効」で、最初に「米国を共通の同盟国として近年急速に拡大する日英の安全保障協力について、同氏は南シナ海ウクライナなどで中国とロシアが破壊しようとしている『自由で開かれた国際秩序』の維持に有効だとの見方を示した」と解説した。

そして、記事の最後に、我が輩が注目した部分がある。

さらに「トランプ米大統領の政策変更によって米国の世界参加に陰りが出てきた現在、米国の世界と同盟関係にある日英が米国を世界の秩序維持に積極関与を継続するように3極で関係を構築することは重要だ」との期待感を示した。

機密情報の交換(インテリジェンス協力)に関しては英国、米国、豪州、カナダ、ニュージーランドの5カ国で構成される情報同盟「ファイブ・アイズ」に日本が加わる可能性について「門戸は開かれている。日本側次第だ」とした。

その上で「まず省庁の壁を取り払い、ファイブ・アイズ仕様の情報機関を整備しなければならない。情報共有には英語をはじめアラビア語など複数の言語ができるインテリジェントス・オフィサー(情報調査官)の養成が必要だ。共通システムや手続きを整備すれば、強力なパートナーとして機密情報を共有できる」とインテリジェンスでも協力が進展すると強調した。

という訳で、岡部伸記者がインタビューする以上、ヘミングス氏はそれなりの人物と思うが、記事の中の「日本はファイブ・アイズに門戸は開かれている」という発言には驚いた。我が輩の認識では、ファイブ・アイズとは、白人国家とか、アングロサクソン系とか、英語圏とか、米英加とオセアニアとの情報同盟と考えていたからだ。その情報同盟に、日本が加わる可能性があるというのだ。

現在の日本は、北朝鮮情勢に対する対応で右往左往しているが、欧米諸国では、対ロシアを念頭にした政策で、右往左往している。それに対する象徴的な動きとして、徴兵制復活がある。先ずは、ウクライナが14年に復活、今年1月にはスウェーデンが復活した。また、ロシアと国境を接するエストニアでは、8カ月もしくは11カ月の徴兵制を維持している。08年に廃止したリトアニアでも15年に徴兵制を再開した。さらに、米国のトランプ政権も最近、新たな核戦略「核態勢の見直し」を発表した。この背景には、ロシアが戦場での使用を想定した「戦術核」を二千発保有し、紛争時に限定的な使用に踏み切る恐れがあると分析したようだ。

そのような国際情勢を考えると、今更ながら、我が国にも“しっかりした情報機関"が必要と思う。つまり、日本には諸外国から信頼されるに足りる「インテリジェンス機関」が存在しないために、日本に駐在している情報員は、どこのインテリジェンス・オフィサーと情報交換したら良いのか、わからない状況にある。これでは、深層に迫るインテリジェンスは入ってこないし、深みのある情報交換も出来やしない。

例えば、ロシア軍は16年11月、北方領土択捉島国後島に、地対鑑ミサイル「バル」と「バスチオン」の配備を完了した。ところが、安倍首相は、依然としてロシアとの経済を中心とした交流事業に協力的だ。このロシアに対する“のめり込み"については、櫻井よしこ氏などの保守派も警告を鳴らしている。つまり、安倍首相の下に、どのくらいの高度情報が届いているのか、という不安もあるのだ。

いずれにしても、国際情勢は、北朝鮮崩壊後のことを見越して動いている感じを受ける。それだからこそ、早急に情報機関を設立しなければならないと考えるのだ。