日本相撲協会に明日はあるのか

謹賀新年、今年も宜しくお願い申し上げます。本年最初のテーマは、筆者の大好きな大相撲に関してである。

昨日、大相撲の元横綱日馬富士の暴行事件で、日本相撲協会臨時評議員会(議長=池坊保子)が開かれ、貴乃花親方の理事解任を全会一致で承認し、2階級降格処分を決めた。しかしながら、ネットやメディアの反応を見ていると、貴乃花親方に同情する意見や、相撲協会を批判する意見が多く、今後の大相撲界が心配になってきた。それを考えると、相撲協会に対する国民や相撲ファンの目が、相当厳しくなっていることを感じる。

そこで、先ずは昨年末に郵送されてきた月刊誌「選択」(1月号)の記事「日本相撲協会ー非課税ボロ儲けの『ごっつぁん集団』」を紹介したい。誠に時機を得た内容で、相撲ファンでない人も参考になると思う。

日本相撲協会は、公益財団法人に認可(2014年1月末)されたことで、全額非課税になった。大相撲は、収益事業の一つに規定されている「興行業」に他ならないが、太古より五穀豊穣を祈って執り行われた神事を起源とし、わが国固有の国技であることなどを考慮、「大相撲」はこうした神事や伝統の「一般公開」だと位置づけ、それ自体が「公益目的事業」とされた。

○売上高(経常収益)は、14年度に106.65億円、15年度は114.6億円、16年度には120億円の大台。一方、納付した税金は、14年度が23.2万円で、15年度と16年度はいずれも15.1万円。協会からすれば大相撲でいくらボロ儲けしても全く税金を払わなくて済むのだから、こりゃ笑いが止まるまい。

○相撲事業の収益構造は、大きく分けて3つで、①テレビなどの放映権料収入②本場所のチケット収入③巡業収入である。16年度の相撲事業収益は102.3億円で、放映権料収入は28億〜30億円とされている。チケット収入は、協会の直接売り、チケット流通業者、さらに「相撲茶屋」があり、約66億〜68億円である。巡業収入は年間6.24億円である。

○経常費用は113.9億円で、最大の支出は親方、力士、行司、呼出に床山など総勢900人規模とされる協会員や職員に支払われる総額65.1億円の人件費。それ以外の人件費に、十両以上に支給される「力士等奨励金」や「力士等補助費」に計3.72億円。さらに現在52ある相撲部屋にバラまかれる「力士等養成費」に12.17億円だ。総額は81.09億円で、人件費関連比率は67%にも達するから驚きだ。

○協会財務のもう一つの特徴は、借入金一切なしの無借金経営だ。協会にとって「将来の重要課題の一つ」とされる国技館の建て替え費用として、16年末までに積み上げた引当金106.79億円(現国技館の総工費は150億円)。そのほか、「国技館改修基金」35.03億円や、資金使途のよくわからない「公益目的事業用資産」30億円、「管理目的資産」20億円、さらには「年間の運転資金をはるかに上回る」とされる現預金55.34億円もプールされている。

○「公益性」を標榜するなら、「タニマチ」と呼ばれる一部の好角家などに寄り掛かるべきではない。一方、人件費を大盤振る舞いするくらいなら、チケット代や巡業における興行権料を引き下げるなど、法人税非課税の恩恵をも含めて全国の相撲ファンにあまねく還元すべきではないか。

以上の内容であるが、参考になりましたか?昔を振り返ると、筆者は80年代に「相撲友の会」(東京)に入会し、相撲好きの人たちと楽しい一時を過ごした。会員の中には、相撲雑誌に寄稿する人や、その後相撲の専門書を出版する人もおり、相撲に関して一方ならぬ知識を持った人たちが多かった。

ある年の忘年会で、会の中心人物3人が何やら話しているので、近くで聴いていると、親方衆に対する“悪口"ばかりであった。例えば、「親方衆と話していると、ただただカネのことばかり。どうして、あれだけカネに執着するのかなぁ」とか、「ある力士の断髪式に参加したが、頭の〝髷〝を切ってしまうと、どう見てもヤクザの親分にしか見えなかった」などの話しであった。筆者などは、純粋に大相撲が好きで入会したが、長年大相撲界を見てきた年配者には、親方衆の裏側の嫌な面を知っていたのであろう。

このほか、若い会員からは、ある親方の“頭の悪さ"を指摘する話しもあった。例えば、元横綱の親方が、記者会見の席上で読み上げた用紙には、漢字の横にたくさんの振りがなが付けられていた。また、若い相撲取りと話していると、本人の中学生時代の“劣等生"ぶりを自慢する話しもあった。

という訳で、今回の一連の動きを見ていると、国民も相撲ファンも、以前のように優しい目で大相撲界を見ていない感じを受ける。その背景には、国税庁調査で、年収二百万円以下の国民が一千万人を超えている時代にあって、“能力"や“人格"に問題がある親方衆(現在98人)が、最低一千万円以上、中には二千万、三千万円という高額な年収を得ていることも関係していると思う。その事実を考えると、いくら相撲協会が公益財団法人でも、ほとんど税金を支払わず、親方衆が定年の65歳まで高額の所得を保証されていては、外部から厳しい視線を向けられることは当然のことと考えるのだ。