道警警察官の懲戒免職処分を考える

最近、北海道の警察官の不祥事を扱った新刊本「見えない不祥事ー北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない」(著者=小笠原淳)を読んだ。この本を読む気になったのは、以前に「恥さらし 北海道警悪徳刑事の告白」(著者=稲葉佳昭)という本を読んだからだ。つまり、まだまだ道警警察官の不祥事があるのか、と思ったからである。

新刊本によると、北海道では道職員の「懲戒処分」を原則全件公表しているが、警察職員のみは唯一それを逃れ、多くのケースを封印されている。さらに、懲戒処分に至らない「監督上の措置」といわれる内部処理があり、この対象となる不祥事は、懲戒の6倍から7倍に上がっているが、これらも公表されないという。

そもそも、懲戒処分には、重いものから順に「免職」「停職」「減給」及び「戒告」の4つがある。免職はクビ、停職は一定期間仕事から干す、減給は給与カット、戒告はお説教程度。2015年は、懲戒処分が22件で、内訳は免職3人、停職3人、減給11人、戒告5人。さらに、懲戒処分に当たらない不祥事、「監督上の措置」は141件という。多いか否かは、各人感じ方は違うと思うが、警察という職場を考えると、多少多いのかもしれない。

ところで、懲戒処分の中で一番気になる不祥事は、16年に“強制わいせつ"の疑いで逮捕され、免職された巡査(31)=当時=のことである。この不祥事で思い出したことは、最近「逆転無罪」判決を勝ち取っている電車内の“痴漢行為"だ。この“痴漢事案"の場合、被害者の証言で逮捕されていることから、少しでも疑われないために、電車通勤の男性諸君が必ず吊革につかむなど、常に手を挙げているという“笑えない話し"を聴いているからだ。

元巡査の事案に戻ると、道警の監察官室が、余りに警察官の不祥事が多いので、被害者の証言だけに依拠し、独自の論理で懲戒処分に導いた可能性があるのでないか、と疑ったからだ。著者の小笠原氏も、事案そのものを疑問視しているし、本人も強く否定している。ところが、札幌地裁は16年4月の一審判決で、懲役2年6カ月・執行猶予3年の有罪判決が言い渡した。

改めて、事案のあらましを紹介すると、2015年1月の午後8時40分、小樽市のJR「ほしみ駅」に降り、同じく被害者の女子高生も降りた。2人は、駅から被害者が前方に、片側2車線の国道に沿って、お互いを認識し、暗い雪道を歩いた。ほかの通行人の姿はなかった。そして、駅から西500㍍弱の地点で、元巡査は女子高生を雪山に押し倒し、下着の上から下半身を触ったという。

一方、元巡査は「雪山に倒れ込んだ女性を助け起こそとしたら、急に相手が叫び出したため、驚いてその場を走り去った」という。実は、女子高生は、1年前ほど前、駅の近くで「不審な男」にあとをつけられる体験をしたことで、それを「前に会った男」だと思い込んでいた。また、犯行を裏付ける客観的な証拠はない。

想像して欲しい。助け起こそうとした若い女性が、突然、大声を出したらどうするか。普通は、うろたえて立ち竦む、逃げ去る、叉は相手の口を押さえるか、その弾みで絞め殺すか、とも考える。それを考えたら、殺人事件に発展してもおかしくない事案である。

我が輩も昔、酒が弱いのに関わらず、よく飲み歩いた。その際、深夜の道を歩いていると、突然、暗がりの路上で、若い女性と二人きりになることがあった。飲み助の諸君なら、何十回と経験しているハズだ。我が輩の経験では、若い女性は警戒しながら急ぎ足で歩き、女子高生は“ちょこちょこ"と振り向くが、走り出すことは少なかった。だが、女子高生が“ちょこちょこ"と振り向くと、そんなに警戒するなら「こんな時間帯に歩くな」と思ったものだ。

我が輩も北海道育ちであるので、夜中の雪道状況はよく分かっている。例えば、歩道の片側に雪山があると、歩道は狭く、足跡は滑りやすくなるので、滑って前方の人にぶつかることもある。また、厚着の服装の寒い時期に、交通量の多い国道の歩道上で、痴漢行為に至るのかと考えるのだ。著者の小笠原氏も、犯行現場を訪ねて、疑問を書き連ねている。

元巡査は、無罪を勝ち取るまで、最高裁まで争うというが、我が輩も心情的に応援したい気分だ。何だか、話がおかしな方向に行ったが、正義感が強い我が輩としては、見過ごすことは出来なかった。著者も、今後も支援するというので、我が輩も今後の成り行きに注目していきたい。