中国共産党独裁体制はいつ崩壊するのか

中国共産党は、第19回党大会(10月18〜24日)と中央委員会第1回全体会議(25日)を開催し、習近平総書記の2期目の新体制を発足させた。だが、これから書くことは、中国共産党独裁体制がいつ崩壊するのか、というテーマである。

以前にも紹介したが、1992年頃に米中央情報局(CIA)が、米国の中国専門家を集めて、20年後の中国を予測した。その結果、中国は3〜4つの国家に分裂する可能性が高いという予測を出した。当時、この予測記事を新聞で見た筆者は、それ以後、CIAの予測が当たるのか否かという目で、中国の政治体制を見てきた面がある。また、その影響か、国内でも「中国崩壊」関連の著書が多数出版されたが、依然として中国共産党独裁体制は健在である。

そのような中で、10月17日発売の「ニューズウィーク日本版」(10月24日)は、「中国予測はなぜ間違うのか」という特集記事を組んだ。この予測とは、つまり“中国共産党独裁体制の予測は外れたのか"ということである。そこで、特集記事の内容を紹介するとともに、将来の展望を考えてみたい。

実は、共産党支配の終焉の可能性が過去に3度あったという。最初は1989年6月の天安門事件の後、第2波は91年にソ連が崩壊した時、第3波は00年代の前半という。

ケンブリッジ大学の調査によれば、政治体制が崩壊する確率は平均して2・2%前後。つまり、誰かが体制崩壊を予測しても、100回中98回までは外れるという。また、別の調査によれば、1950〜2012年の間に権力を追われた独裁者は473人いるが、そのうち民衆の反乱によって追放されたのはわずか33人(7%)。必要条件は、比較的に分かりやすい、インフレ率や失業率の上昇、経済成長率の低下などという。

一般に独裁政権崩壊の直接的な引き金となる事象には4つのタイプがある。選挙での不正、軍事的な敗北、近隣国での独裁体制崩壊、そしてアラブの春のような偶発的暴動の民衆蜂起への拡大だ。しかし、政権の崩壊にはエリート層、とりわけトップレベルの軍人や政治家の離反が必要だ。

中国共産党は、経済的繁栄のみが政治的正当性を生み出せることを熟知している。その意味で、崩壊のリスクは長期間低水準にとどまっていても、突如として急上昇する。中国の場合、中所得国であることから、今後20年の間に崩壊のリスクが高まると予想される。

独裁政権の崩壊の研究で分かったことは2つある。それを中国に適用すると、第一は中所得国の地位を達成すると3倍近く高くなる。第二は独裁政権に支配された中所得国は、財産権の保護が不十分で、腐敗が著しいため、持続的な経済成長を達成し、高所得国になることができない。言うまでもなく、経済が停滞すれば共産党政権の存続は危ぶまれることになる。

共産党政権が永続するという主張に対して、私たちは健全な懐疑を抱き続けたほうかいい。かつてマーク・トウェインが、「予言は難しい。特に未来についての予言は」と言ったように、という一文で特集記事は終わっている。

要するに、特集記事では「中国崩壊」の出版物を多少冷やかしているが、将来的に中国共産党独裁体制の崩壊を予測している。しかし、ここで注意しなければならないことは、予測が往々にして“願望"になることだ。つまり、米国もロシアも日本も、14億人の中国が3〜4つに分裂することを願っているからだ。その背景を考慮して、我々は予測記事を理解する必要がある。

最後は、筆者の予測であるが、江沢民胡錦濤の元前総書記には鄧小平に指名されたとの正当性があったが、習近平以後の党指導者には何もない。さらに、習総書記が、如何に腐敗と戦っても、腐敗は古来中国の伝統であり、撲滅することは不可能だ。それを考えると、この先の10年も30年先も、中国共産党独裁政権が続いていることは想像しずらい。

この背景には、

ノーベル平和賞を受賞した劉暁波が、まともな治療を受けずに刑務所で死亡した。つまり、中国共産党に殺された。

国境なき記者団の17年度世界報道自由ランキングで、180カ国中176位である。

○15年7月9日、人権派弁護士など約300人が一斉に検挙された。この事実は記録映画「709の人たち」として映画化された。

という現実がある。これらの人権無視の実態を見せつけられると、どうしても中国共産党の独裁体制が、これからも永遠に続くとは考えられないのだ。その意味で、中国共産党の動向や中国軍の軍備増強と同時に、中国国内の動向把握にも務めなければならないと思う。