改めて新幹線札幌駅のホーム問題

昨年4月に、「あきれた札幌駅新幹線ホーム問題」という文章を作成した。その後の一年半、ますますあきれた動きを示しているので、時間を追って紹介したい。

先ずは、北海道新幹線の札幌駅ホームをめぐっては、今の札幌駅の1、2番線に新幹線が乗り入れる案と、駅の東側に新たなホームを造る案の2つの案があり、建設主体の「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(鉄道・運輸機構)とJR北海道が検討してきた。しかし、1、2番線への乗り入れ案は、在来線の運行への影響を抑えるための追加工事が長期化することと、また、東側にホームを造る案はJRタワーなどの施設の改修費用が膨らむことなど、工期やコスト面で課題が多いとことで最終的な結論は出なかった。

こうした中、当初、小樽市から札幌市街地区間については、手稲トンネル(1万8750㍍)を出た後は発寒駅付近から札幌駅まで函館本線沿いに新幹線の高架線(約8・4キロ)を造る計画であった。ところが、鉄道・運輸機構は6月30日、上記の高架線区間をトンネルに計画を変更して、トンネルの出入口を桑園駅付近に移し、名称も「手稲トンネル」から「札樽トンネル」(2万6230㍍)に変わることを発表した。その結果、札樽トンネルの出入口から札幌駅までは、約1キロの高架線区間になった。

ところがである、新幹線札幌駅のホーム位置問題でゴタゴタしている間に、今度は「札樽トンネル」をそのまま札幌駅の地下まで延伸する案が急浮上してきた。それも、ビルや商業施設の基礎部分などがなく、工事が比較的容易ということで、駅南側の「北5条・手稲通」の地下周辺が浮上してきた。もしも、この案で建設すると、小樽市朝里川温泉付近から「札樽トンネル」に入ると、札幌駅まで一度も地上に出ることなく到着する。

我が輩は、ネットでこの案を知った時、二つの不満・不安を感じた。一つは、これで札幌から旭川や帯広・釧路へのミニ新幹線(標準軌改築)の夢が消えたことである。その理由は、地下の新幹線札幌駅から地上の在来線に出るために、新たに苗穂駅付近までトンネルを造らなけならない。この建設計画が浮上するのは、札幌駅開業後の20〜30年後になるが、その時には建設費の“何百億円"は誰が負担するのかという問題にぶつかる。

もう一つは、テロ事件などで車両が炎上した時の対処だ。何せ、JR北海道では最近、特急列車がトンネル内で火災事件を起こしたという前例がある。そのような状況下で、地下の札幌駅から新幹線車両が地上に出るためには、遠く約27キロ先のトンネル出口まで行かなければならない。こんなことで、車両火災などに対処できるのか?

確かに、国内には千歳空港駅や成田空港駅、さらには建設中のリニア中央新幹線の品川駅や名古屋駅が、地下の終着駅になる。しかしながら、これらの駅は、都市化や地形のために地下駅にしたのであって、ある面致し方ない。だが、新幹線札幌駅の場合には、鉄道関係者の先見性や無計画が、このような事態に陥ったのだ。それを考えると、もしも将来、新幹線札幌駅で人命が失われるような事態になれば、世間は“人災"と見るであろう。

ここに至っては、この文章があと20〜30年後、先見性のある文章ということで、脚光を浴びることがないことを願うだけである。