旭川市をもっと重視したい

6月27日の深夜、NHKBS1の番組・北海道スペシャル「“鉄路縮小"の衝撃〜どう守る北海道の公共交通〜」(昨年12月末、北海道で放送された1時間15分間番組)を観た。番組では、昨年11月、JR北海道が「当社単独では維持困難」とする路線を取り上げ、廃止すると「街の衰退に繋がる」「人口減少に発射がかかる」との道民の声を紹介していた。また、番組に出演した遠軽町長が「札幌周辺だけ鉄路を残して、北海道はどうなるのか」との意見を述べていた。まさに、JR北海道の維持・再建は、北海道最大の問題であることを改めて感じた。

というわけで、今回は以前から気になっていたことを取り上げる。それは、多くの鉄道アナリストが「網走・北見〜札幌間は、石北本線ではなく、廃止された池北線(池田〜北見)を利用するべきであった。返す返すも残念」との見方である。つまり、トンネルの多い石北本線よりも、トンネルが少ない池北線の方が、少ない投資でスピードアップできたという見方である。その意味するところは、“石北本線の廃止はやむを得ない"と同意語で、まさに“土地勘"のない者の見方と思う。そこには、旭川市の重要性や、オホーツク管内との結びつきを無視した見方で、とてもでないが賛同できない。

そこで筆者は、北海道に置ける旭川市の重要性と、石北本線沿線に対する影響力を説明したい。旭川市は、札幌市に次ぐ第2の人口規模(34万人)で、北海道のほぼ中央部に位置している。そのため、明治時代の初期には、北海道開発のために、道庁を札幌市から旭川市に移すべきとの意見もあったようだ。そのくらい、旭川市の位置は重要である。

現在、石北本線宗谷本線の列車は、旭川市を通って、北見・網走や稚内に向かう。ところが、石北本線が廃止されると、稚内に向かう列車しか通らない。必然的に旭川市は活気がなくなるし、オホーツク管内北部(遠紋地方)は不便になる。この点を考慮すれば、そう簡単に“石北本線の廃止"に繋がる意見には賛同できない。

さらに、オホーツク管内の人たちは、長年旭川市を通って札幌に行くので、旭川市には親近感を持っている。一方、旭川市も、近隣の市町村に対しては、それなりの影響力がある。例えば、

○旭川裁判所の管轄区域には、オホーツク管内北部が入っている。

旭川市は、稚内市やオホーツク管内北部の患者の高度医療を担っている。

高校野球の北・北海道大会は、毎年、旭川市スタルヒン球場で開催している。

補足すると、稚内市やその近郊の高度医療が必要な患者は、旭川医科大学が担っていると聴く。また、筆者の同級生が60歳前後で亡くなったが、その際には遠軽町から旭川市まで、救急患者のドクターヘリで搬送されたと聴く。つまり旭川市は、高度専門医療機関が過疎地の患者を受け入れたり、道北や道東のスポーツ大会を開催する“拠点都市"でもある。また、旭川市は観光都市としても魅力的であるが、そのほかに道北や道東の観光地への出入口という側面もある。

以上、旭川市石北本線沿線との関係を説明した。要するに、札幌までの時間短縮を考えるのでなく、北海道全体のことを考えて欲しい。時間短縮を実現するならば、新たに石北トンネルを建設すれば解決する問題である。札幌だけ繁栄しても、地方が衰退するならば、北海道全体のためにならない。その点を考慮して、今後の交通体系を考えて欲しい。

今後のことを考えると、道庁機能の一部を旭川市に移すことも必要ではないのか。JR北海道の経営が厳しくなった背景には、札幌市への人口流入の多さもある。今や札幌市の人口は195万人で、道内人口の5分の2に達している。だからこそ、道庁職員を全道に配置する政策も“あり"と考えるのだ。

それにしても、2030年度の北海道新幹線幌延伸が待たれる。札幌延伸後には、豪華観光列車を「札幌〜帯広〜釧路〜網走〜旭川〜札幌」間に走らすという“夢物語"が現実化する。その“夢物語"を断念させないために、速やかに“道と国"が関わるべきだ。沿線自治体と話し合っても、根本的な解決策に至らないのだから…。