今こそ「宇都宮アリーナ」の新築を!

バスケットボール男子のプロリーグ「Bリーグ」の決勝が5月27日、東京・国立代々木競技場で開催(入場者1万144人)され、栃木ブレックス川崎ブレイブサンダースを85-79で破り、初代王者に輝いた。この事実を知って、筆者は「今こそ、『宇都宮アリーナ』を建設する時だ。絶好の追い風が吹いている。この機を逃す手はない」と思った。

以前にも書いたが、筆者は15年前から数年間、栃木県のアイスホッケーチーム「日光アイスバックス」の経営に関わった。その際、栃木県の有力者に対して、「アイスバックスを強化するため、宇都宮市内に1万人規模のアリーナを建設して欲しい」旨のお願いをした。しかしながら、趣旨は理解してくれたものの、「宇都宮市に1万人の観客を呼べる競技種目があるのか」という反応が多く、賛同を得なかった。だが、栃木ブレックスのファンを見ていると、今や“夢物語が夢物語でなくなった"との感じを受けた。

「Bリーグ」初代チェアマン・川淵三郎氏は、昨年末に発売された週刊誌「東洋経済」(16.12.31)で、日本の室内競技場の現状を説明している。“なるほど"という内容であるので、その一部を引用する。

(バスケットボール会場に行って)初めに思ったのは日本にあるのは体育館で、アリーナじゃないってこと。アリーナというのは、やっぱり選手だけでなく観客のことも考えた施設で、居住性に優れ、リピーターになりたいだとか、ホームの雰囲気だとか、そういったものを感じられる所。プロは、「アリーナ」を造らないかぎり、発展するわけない。

…ポイントはアリーナ。盛岡市長が「5000人収容のアリーナを造る」と言ってくれた。沖縄は1万人のアリーナ。東京にもいずれできる。有明アリーナができれば、東京五輪がエポックメーキングになると思う。マディソン・スクエア・ガーデンを超えるようなアリーナが東京にないことのほうがおかしいんだ。

今、青山学院大学が施設を改修してBリーグのチームのホームとして使わせてくれたりしているが、今度東大もアリーナを造ってくれると。スポーツをめぐる環境は本当に変わってきたんだと思うよ。

また、川淵氏は、「Bリーグ」決勝後、報道陣の取材に応じているが、その話の内容は、

ー満員となった観衆にも触れ「(チケットが)すぐに売れ切れたと聞いている。1万五千席でも完売したと思う。やる人のための体育館はいっぱいある。見る人が非日常を体験できる画期的なアリーナをもっとつくってほしい」と訴えた。(産経新聞より)ー

ー「1万人入れば御の字じゃなく、1万五千人のアリーナをつくるのが常識だよ。今日なら1万五千人でも完売していた」と新アリーナの必要性を訴えていた。(スポーツニッポンより)ー

即ち、筆者が15年前に訴えたことを、現在、日本のスポーツ界に最も影響力のある川淵氏が、“さすが"という内容で訴えている。ある面、やっと理解してもらえる時代になったのかもしれない。そうであるならば、栃木県のバスケットボールとアイスホッケーのファンは、ともに手を携えて「宇都宮市にアリーナを」と訴えて欲しい。ファンのリーダーシップによるとこが大きいし、変化の兆しがはっきりと表れているからである。

だが現実は、栃木県が22年の国体開催を見据えて、「新スタジアム」(工期=19年9月30日、入札額=133億円)の新築。また、宇都宮市は、次世代型路面電車(LRT)の建設(事業費=383億円)という難題を抱えている。そのため、行政側から「それどころの話ではない」と言われそうだが…。

しかし、栃木県にはアリーナを建設する余地がある。それは、栃木ブレックスの本拠地「宇都宮市体育館」(1979年開館)の収容人数が2,900人。また、アイスバックスの本拠地「霧降アリーナ」は、固定席1604席、立見席392席である。さらに、栃木県体育館は、1965年オープンで、固定席は1920席であるからだ。行政側は、トップアスリートに対する最高の支援策が、アリーナ新築であることを忘れないで欲しい。その意味で、栃木県のアリーナ新築事業の可否は、栃木県の“スポーツ文化の進度"を試す試金石と思う。

アイスホッケーに関しては、栃木県は非常に重要な地域である。何故なら、宇都宮市の盛り上がりが、今後のアイスホッケー界の盛況に直結しているからだ。現状を報告すると、日本は長野五輪以来5大会連続で出場を果たせず、世界ランキングも23位と下落基調が止まらない。2020年東京五輪のバレーボール会場として、「有明アリーナ」(観客数1万五千、建設費約340億円)が建設される。このアリーナは、全てのボールゲームと、アイスホッケーやフィギュアスケートなど、冬季の大会もできる施設という。その冬季の大会が開催できる施設が、北関東の最大都市・宇都宮市にもう一つ存在しても良いと思う。何と言っても、栃木県は関東地方で、ウインター・スポーツの理解度がナンバーワンという背景があるからだ。それだけに、栃木県の責任は重いのだ。

思い返すと、宇都宮市は、羨ましい都市である。その理由は、程良い距離(約100㌔)に東京があるので、そほど努力しなくても大企業が進出する。その結果、14年度の県民一人あたりの所得は全国4位(13年度3位)。つまり、豊かな県民が多いのである。このほか、宇都宮市近辺を掘削すると、どこからも良質な温泉が湧き出てくる。そのため、宇都宮市の周辺市町村には、それはそれは立派な「公共温泉施設」が存在する。

以上、宇都宮市の現状などを説明したが、そこには“五十万都市宇都宮"に期待する部分がある。多くの地方都市は、都市計画の中で「何を目標にすべきか」「何が出来るのか」「どうあるべきか」などを模索している。そんな中で、地域的に恵まれた宇都宮市が、将来的には“模範都市"として存在感を示すと考えている。