遠軽高校ラグビー部に栄光あれ!

例年4月1日は“人事の季節"で、嬉しいこともあり、寂しいこともある。筆者にとっての今年は、実に寂しい季節になった。何故なら、遠軽高校ラグビー部の監督と部長が、異動になるからである。

特に監督は、遠軽高校在職17年で、ラグビー部監督は14年であったので、ある面、仕方がないことと思う。思い返すと、一昨年までの6年間で5回も花園出場させたことは、ラグビー部史上“最大の功績者"と言える。その間、筆者は毎晩ネットで“ラグビー部のブログ"をチェックすると共に、月刊誌「ラグビーマガジン」を定期購読してきた。更に、後輩のプレーを観戦するために、関東地方の色々なラグビー場を訪れたし、全国高校ラグビー大会の会場である花園にも2回ほど赴いた。もしも、母校が花園出場を獲得しなければ、永遠に高校ラグビー界の聖地・花園ラグビー場を訪れることもなかった。

筆者は、元々ラグビー好きであったが、その大元は高校時代の体験にある。実は、筆者の高校2・3年生時、ラグビー部が二年連続で花園に出場した。3年時には、花園出場決定後に、練習試合に駆り出されたことがある。何せ、ラグビー部の練習相手が近くに存在しないので、ラグビー部のレギュラー落ちと、陸上部、柔道部、レスリング部などの仲間とチームを結成して、練習試合をしたのだ。

大学時代には、体育の授業でラグビーを選んだが、当然のごとく高校時代の体験が影響している。更に、同級生が法政大学のレギュラーとして出場していたので、秩父宮ラグビー場に赴いたこともある。筆者の学生時代は、早稲田、明治、法政の三校が強豪で、その中の一つに同級生が進学したのだ。

今年も3月末、ラグビー部員が、茨城県竜ヶ崎市の流通経済大学で合宿を行った。この合宿には、全国の有力校が参加し、連日、練習試合を行う。筆者は、5年くらい前から、大量の差し入れを行っているので、今では年中行事になった。最初は何を差し入れしたら良いのか困ったが、生徒の希望を聞いているうちに、甘夏、バナナ、イチゴ、チョコレート、ビスケット、ケーキなどに落ち着いた。

後任の監督は、遠軽高校ラグビー部OB(三十代)ということであるが、前任地の高校にはラグビー部が存在しないので、多少心配していた。ところが、練習試合では、レフリーを務めていたので、監督に「長年、ラグビーから離れているので心配したが、レフリーができるくらいなら大丈夫ですね」と尋ねたところ、監督は「それくらい出来なければ、遠軽高校ラグビー部を任せられない。問題は、まだラグビーチームを作り上げた経験がないことだ」と説明した。この自意識の強さに驚くと共に、嬉しくもなった。

さて、現在の部員数は選手8人という悲惨な状況下にある。もしも、新年度に1年生が7人入部しないと、チームが編成できない。急速な弱体化には驚いているが、その原因は地方の人口減少と少子化の影響があるものと考えている。

そこで最後は、新入生に訴える文章を作成することにした。

そもそもラグビーという競技は、1823年に英国のパブリックスクールが起源とされているが、その後は英国の植民地・インドを支配するために、エリートの頭脳と同時に体力を養うために普及したという側面もある。つまり、ラグビーは人を育てるには最高のスポーツなので、「紳士のスポーツ」とも言われている。そのような背景から、日本でも戦前は大学を中心に普及してきた。戦後の高校ラグビー界も、旧制中学の流れを汲む高校が中心に普及した。オホーツク管内でも、北見北斗高校を中心に、遠軽高校と美幌高校が対抗校として活動してきたが、いずれの高校も戦前からの学校である。

この4月1日には、遠軽町ラグビーとサッカーの試合会場「えんがる球技場」(人工芝生コート二面)がオープンする。その意味するところは、主にラグビーを通じて町おこしに繋げる意図がある。つまり、遠軽町はもう一つの有力な部活動である吹奏楽部を通じての“音楽の街"、そしてラグビーを通じての“ラグビーの街"を標榜して、人を招き入れたいのだ。その意味では、ラグビー部の強化は喫緊の課題であるし、町の活性化に繋げる事業でもある。

今年入学する諸君!運動部に入る予定であるならば、是非ともラグビー部に入って欲しい。ラグビーは、団体球技種目の中では、最も出場選手が多い15人で、日本人の特長である“纏まり"を学べる場でもある。また、ラグビー精神を言い表している格言「One fOr AII、AII fOr One」(1人は皆のため、皆は1人のため)は、まさにラグビーの本質である“自己犠牲の精神"を表現している。

諸君、今年入部予定者の中には、素晴らしい選手がいる。だが、ラグビーは一人だけ優れた選手がいても、仲間がいないと勝利することは出来ない。だから、どうしても君たちの力が必要なのだ。エリート校の端くれの高校に入学した以上、そして社会のエリートになりたければ、是非ともラグビーに親しんで欲しい。社会に出た時、絶対に損をすることはない。何故なら、社会のエリートに“ラグビー嫌いがいない"と断言出来るからだ。大量入部の吉報を待ちたいと思う。