JR北海道の問題点と対策

道内の鉄道網のあり方を検討してきた道の「鉄道ワーキングチーム」(座長=岸邦宏・北大准教授)は、2月7日に「将来を見据えた北海道の鉄道網のあり方について」という報告書を発表した。具体的な線区は挙げていないが、北見・網走を中核都市群と位置づけて“石北線"、更に北方領土隣接地域を考慮して“宗谷線"と“根室線"の存続を想定している。北海道知事も、報告書を尊重すると発言しているので、今後はJR北海道と沿線自治体との協議が本格的に始まるようだ。

そこで、有力な鉄道関係者は、現在のJR北海道の現状をどのように見ているのかを紹介したい。紹介する人物は、全てJRの有力者であるので、今後のJR北海道の経営を考える上で、非常に参考になると思う。

葛西敬之JR東海代表取締役名誉会長の言

JR四国は仕方がない面がありますが、JR北海道は30年間を本当に有効に使ったかを検証してみるべきです。JR北海道は借金ゼロの上に、6822億円の経済安定基金を持ってスタートしました。金利が下がったから稼げなくなったというだけでなく、もっとファンダメンタルな経営戦略で問題はなかったのでしょうか。

大きな事故が起きてしまう前までに、整備を食いつぶしたようにも見えます。もっと早く手を打っていくことで事故を起こさずに、よりいい形がとれたかもしれない。どうにもならない路線は、トラブルが起きる前に早めに道路へ転換する努力をする余地があったかもしれません。ー(週刊誌「日経ビジネス」より)

松田昌士(北見市出身)・JR東日本顧問の言

北方領土問題がある中、根室につながる路線を廃止するわけにはいかない。旭川〜稚内間はできるだけ直線にする。畑ばかりの地域であり、線路に隣接する畑と交換すれば直線化は可能だろう。沿線は観光資源も多い。観光列車としても大いに活用できる。そのために運賃を上げる方法もあるかもしれない。しかし、やるべきことをやらないで上げてしまうと、国鉄時代と同じで「貧すれば純する」になる。ー(「産経新聞」より)

○井出正敬・JR西日本元会長の言

JR北海道の経営陣は、過激分子も入り込んだ労働組合の意向に、配慮し過ぎているように見えます。ー(「北海道新聞」より)

以上の発言を読むと、何となく現在のJR北海道が抱える問題点が理解できるし、今後の見通しも予想できる。つまり昨年11月18日、JR北海道が自社単独では維持できないと発表した10路線13区間のうち、名寄稚内間、釧路〜根室間、東釧路〜網走間、新旭川〜網走間を除いた路線は、近いうちにバス転換になることが予想できる。鉄道最大の特性である“高速の大量輸送"を発揮できない線区である以上、致し方ないと考える。

それでは、絶対に廃止してはならい札幌〜稚内間、札幌〜網走間、札幌〜釧路・根室間は、今後どのような施策で維持・管理していくのか。筆者は、以前から“北海道開発予算"を投入するべきと主張しているが、果たしてどのような施策が打ち出されるのか、非常に関心がもたれる。いずれにしても、JR北海道と北海道にとって、非常に重要な時を迎えていることは確かである。

それにしても、道議会の存在感が無さ過ぎる。そもそも北海道には、昨年度に開発予算が5417億円、更に地方交付税が6522億円という膨大な国費が投入されている。それを考えると、JR北海道の経営赤字200億円程度は大した金額ではない。道議会は、議会費(約34億円)を削減してでも、JR北海道を支援する資金を確保する議案を提出するべきである。