五輪施設「有明アリーナ」は絶対に建設すべきだ

2020年東京五輪会場の見直し作業が、いよいよ最終局面になってきた。そんな中、がぜん筆者が注目する新聞記事があった。それは、本日の朝日新聞で、バレーボール会場の「有明アリーナ」(江東区)に関する記事である。

「…五輪後の活用法としては、冬に氷を敷き、フィギュアスケートやアイスホッケーの国際大会を誘致する計画もあると、国際スポーツ事情に詳しい関係者は明かす。横浜アリーナへの移転案が採用され、有明が建設されなければ、こうした構想は水の泡となる」

国民の多くは、日本の競技施設は充実していると考えているが、実は観客席数が少ないのだ。その背景は、日本のスポーツ文化は、アマチュアを主体に発展してきたので、観客席数を重視してこなかった。つまり、プロスポーツを発展させる思想で競技施設を建設していないので、観客席数が少ない。特に、地方の競技施設は、順繰りの国体を開催するために建設しているので、なおさら見かけは立派でも、観客席数が少ない。

筆者は、十数年前、栃木県のアイスホッケーチーム「日光アイスバックス」の経営に関わった。その際、栃木県の有力者多数に対して、「JR宇都宮駅東口広場に一万人規模の競技場を建設して欲しい」と要望したが、未だにそのような競技施設は存在しない。建設を要望した理由は、「日光アイスバックス」がプロチームとして活動するためには、どうしても一万人以上の競技施設を確保して、“入場料収入"を上げたかったのだ。そのため、現在でも「日光アイスバックス」というチームは存在しているが、競技施設が「栃木県立日光霧降アイスアリーナ」(固定席1604席、立見席392席)なので、入場料に余り期待できず、未だに強豪チームになれないでいる。

それでは、首都圏の冬季の競技施設について説明したい。もう昔のことになるが、2000年10月7日に「さいたまスーパーアリーナ」のこけら落としとして、北米アイスホッケー(NHL)の開幕戦が行われた。筆者は、この開幕戦を観戦したが、会場は一万数千人の観客数で溢れ、まさにプロスポーツにふさわしい雰囲気であった。ところが後日、あるアイスホッケー関係者が「さいたまアリーナは、バスケット会場として建設されたので、アイスホッケーやフィギュア大会を開催する時には、わざわざ数百万円の資金を出してスケートリンクをこしらいている。だから、採算が合うフィギュア大会は開催出来るが、採算が合わないアイスホッケー大会は開催出来ない。それに、仮設でこしらいているので、氷の質も良くないのだ」という話しをした。どうりで、その後「さいたまアリーナ」では、大規模なフィギュア大会が開催されているが、採算が合わないアイスホッケーの試合は行われていない。

要するに、首都圏も、プロスポーツに対応出来る競技施設が少ない。なおさら、冬季のスポーツ競技施設は、絶対的に少ない。だから、バスケットやバレーボールだけでなく、冬季のスポーツにも対応出来る多目的アリーナが絶対に必要なのだ。

もう一度確認したい。五輪を開催する背景には、素晴らしい競技場を建設して、レガシー(遺産)として残すという意味もあるハズだ。その意味で、安かろう悪かろうでは困るのだ。この際は、絶対に国際基準に合致した「アスリート・ファースト(選手第一)」の競技施設を建設するべきなのだ。