司法試験改革は成功したのか?

読売新聞は、9月19日付け社説で「法科大学院は再生できるのか」との題名で、法科大学院を巡る諸問題を提起している。確か、法科大学院の理念は、現役の法曹が指導に当たるなど実践的で丁寧な教育を受けた人材育成にあった。受験テクニックが優先されがちで「点」の選抜と言われた旧司法試験を改め、「線」(プロセス)を重視したものと言わていた。

しかしながら、現状はいろんな問題点が噴出して、当初の思惑通りには進んでいない。その一つに、予備試験制度もあるのではないか。予備試験は、経済的に法科大学院に通えない学生や社会人らの受験を想定し、「例外ルート」として2011年に始まった。ところが、今年の司法試験合格者1583人のうち、予備試験合格者が235人もいる。これでは、「法科大学院は予備試験で合格しない人が行くところ」ということになる。

法曹界で評価されるためには、少しでも早く司法試験に合格したい。例えば、裁判所や検察庁は、定年が63歳である以上、若くして司法試験に合格した人が出世する。そのため、優秀な学生は“抜け道"が存在する以上、わざわざ法科大学院を経ないで、法曹界に飛び込む努力をする。

それでは、検察庁の人事を見てみよう。検事は、毎年約70人任官するが、そのうち同期から3人前後が、内閣が任免し、天皇陛下が認証する検事長に就任する。そこで、司法修習生10期以後の「検事長」就任者を、学年別に紹介する。大学と司法試験を現役で合格した人は「現役」、1年遅れは「1遅」とした。

○10期(昭31年修習、昭33年任官)=現役・4人、1遅・1人。

○11期=現役・2人、2遅・1人。

○12期=1遅・1人。

○13期=現役・3人、1遅・2人、3遅・1人。

○14期=1遅・1人。

○15期=現役・2人、1遅・1人、3遅・1人。

○16期=1遅・1人、2遅・1人、4遅・1人。

○17期=1遅・3人、2遅・1人。

○18期=1遅・1人、2遅・2人、3遅・1人。

○19期=現役・2人。

○20期=現役・2人、1遅・2人、2遅・1人。

○21期=現役・1人、1遅・3人、2遅・2人。

○22期=現役・3人、2遅・1人。

○23期=現役・2人、1遅・1人、2遅・1人。

○24期=現役・3人、3遅・1人。

○25期=2遅・1人。

○26期=現役・2人、2遅・4人。

○27期=2遅・2人、3遅・1人。

○28期=現役・3人、2遅・1人、3遅・1人。

○29期=1遅・3人、4遅・1人。

○30期=現役・1人、1遅・2人、2遅・1人。

もう、お分かりであろう。つまり、25歳以上で任官した検事は、ほとんど認証官にはなれない。そこで、優秀な学生は、予備試験を受けて、少しでも早く司法試験を突破しようとする。だから、司法試験改革は成功したのかと問うているのだ。