陸上男子100㍍選手に対する杞憂?

いよいよ、来月の8月5日から21日までの間、リオデジャネイロ五輪が開催される。スポーツ好きの我が輩にとって、4年に一度の五輪は、目が離せない。特に、陸上と競泳は、絶対に目が離せない競技である。

そうした中で、楽しみにしている陸上男子100㍍決勝が心配な状況になってきた。その理由は、優勝候補筆頭のウサイン・ボルトが、五輪選手に選出されたものの、ジャマイカ選手権の決勝を左太もも裏を痛めて欠場したからだ。この結果、全米選手権で優勝したジャスティン・ガトリンが、俄然、金メダル候補に浮上してきた。

このガトリン選手、年齢は34歳で、2004年アテネ五輪の100㍍で金メダル、翌05年の世界選挙権では100㍍と200㍍で2冠を獲得したが、06年の薬物検査で2度目のドーピング(禁止された薬物や手法を用い、競技能力を不正に高める行為)違反が発覚した。本来であれば2度目であるので、永久資格停止処分になるケースであったが、「1回目(01年)の処分は不当」と主張して、4年の処分に軽減された。10年に復帰して、12年ロンドン五輪では銅メダルを獲得。昨シーズンは、9秒74を筆頭に9秒7台を5度マーク、世界選挙権では100㍍と200㍍が共に、ボルトに継いで銀メダルを獲得した。もしも、リオ五輪で優勝すれば、12年振りの優勝になるが、100㍍という種目では考えられない間隔での優勝になる。

実は、ガトリンの活躍には、ドーピングと関係があるのではないかと疑っている。なぜなら、ドーピングには、やっかいな問題がある。それは、ドーピング専門家の「薬物を使用すると、使用を停止しても数年間効果があるのではないか」という見方だ。医学的には、未だに解明されていないが、多くの専門家が疑っている。

7月8日付け「朝日新聞」で、日本陸上競技連盟強化育成部のトップが「100㍍の世界のトップ選手のピーク年齢を調べたところ、26歳前後だった。かつては22歳前後と言われたが、プロ化が進み、大学卒業後も競技に打ち込める環境が整ってきたことで、ピークがもっと後にくることも分かってきた」と述べている。確かに、ある面理解出来るが、全面的に同意するわけにはいかない。やはり、ドーピングの影響もあると思う。

ガトリン以外にも、疑わしい選手がいる。以前にも紹介したが、今年4月に40歳になったキム・コリンズ(セントッッ・ネイビス)で、03年の世界選挙権男子100㍍優勝(27歳)して、09年9月にいったん引退を表明。11年1月にカンバックして、13年には9秒97、更に今年5月下旬には自己新の9秒93を記録し、40歳以上で史上初の9秒台スプリンターになった。40歳になって、自己記録を更新することは、我が輩の想像力を超える出来事で、どう考えてもドーピングを疑わざる得ない。

それでは、ドーピング違反に対しては、どのように対処すれば良いのか。現在は、一度目のドーピング違反は2年間の出場停止処分で、二度目は永久資格停止処分である。処分が甘いという意見があるので、それでは一度目で永久資格停止処分にしてはどうか。専門家の見方によると、短期間で何度も禁止薬物が検出されるケースは、その選手が禁止薬物と知らずに摂取を続けた可能性が高いという。更に、禁止薬物が含まれたサプリメントを“うっかり"摂取したことを考えると、厳しすぎると思う。しかしながら、陽性反応の選手を出場させることは、スポーツの“公平性"を考えるとフェアではない。悩ましい問題なのだ。

いずれにしても、ガトリンが優勝した場合、陸上界で物議を醸し出すことは間違いない。我が輩がこよなく愛する陸上競技は、今更ながら、嘆かわしい現状にあるのだ。