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新国立競技場の建設デザイン決定で思うこと

政府は22日、仕切り直しになった2020年東京五輪パラリンピックのメーンスタジアム、新国立競技場の新たな建設計画で、A案の採用を決めた。筆者は、なんとなくB案を支持していたので、多少残念な気持ちになった。この心境は、筆者だけではないと思う。

何故なら、日本スポーツ振興センター(JSC)審査委員(7人)の採点では、980点満点でA案が610点、B案が602点の僅差であり、その上、点数配分の大きい「工期短縮」の項目では、A案が177点、B案が150点であったからだ。つまり、「工期短縮」の項目でA案が大量点を獲得して、他の重要な項目ではB案が勝利しているからだ。これでは、果たして次世代に誇れるレガシー(遺産)を残せるのか、ということが大変心配になったのだ。

以上の経緯は、表面的な説明で、実はA案が採用された一番の理由は、ゼネコンの影響力ではないかと見ている。要するに、A案にはゼネコンの大成建設が関わっているが、同社は1964年の東京五輪のメイン会場となった旧国立競技場を建設し、今回のコンペに対しても、一番熱心に動いていた。その大成建設の“どうしても落札する"という意気込みは、審査委員に対しても伝わっていたと思う。

さて、新国立競技場に関しては、色々と心配なことがある。まず第一は、空調が無いので、風を観客席に流し込んで冷却システムを採用とのことであるが、これではますます正面スタンド前の走路は、向かい風になってしまう。これでは、以前から指摘している向風になり、陸上競技の短距離種目には不利に作用して、好記録が期待できない。まさにアスリートにとっても、観客にとっても、つまらない競技場になってしまう。

第二は、スタンドの屋根には、大量の国産木材を活用するが、木材建築で一番の心配事は火災である。現在のご時世、世界各国でテロ事件が頻発しているが、日本も例外ではいられない。それを考えると、建築中から火災には十分気をつけて欲しいものだ。

第三は、五輪後のことである。さし当たり、収容人員6万8000人で建設するが、五輪後にはトラック部分を客席で覆い、収容人員約8万人の球技場にするとのこと。この計画に対しては、大いに反論したい。当初、陸上競技と球技を共存させ、多様なイベントの開催ができる可動式の観客席を設置する計画であったはずだ。ところが、いつの間にか、可動式観客席の計画が消えて、サッカーやラグビーの球技場に活用する計画案が浮上した。陸上競技があっての五輪である陸上競技を、スポーツ関係者はどのように考えているか、大御所たちに尋ねてみたい。

これまでマスコミは、建設予算のことばかり報道して、レガシー面での報道は、ほとんどなされてこなかった。これから30年、50年、いや100年後に至っても、国内外の最高の試合が実施される競技場である以上、アスリートにとっても、観客にとっても、最高の競技場として存在して欲しい。それを考えると、競技場建設は来年12月であるので、それまでに手直しできる部分は、どんどん設計に生かして、素晴らしい競技場にしてもらいたい。