北見市と我孫子市との予算を比較して

日本の財政状況が危機的である中で、歳出削減は喫緊の課題である。そこで、地方自治体の比較対象として、オホーツク地方の中心都市・北見市と千葉県我孫子市の一般会計予算の実体を紹介したい。

以前から北見市(12・2万人)と我孫子市(13・3万人)は、ほぼ人口が同じであるので、予算規模も同じくらいと考えていた。ところが、調べて驚いた。北見市が688億円で、我孫子市365億円の約2倍あるのだ(数字は本年度)。

そこで北見市我孫子市の歳入内訳を観ると、市税=北見市139億円、我孫子市172億円、地方交付税=北見市199億円、我孫子市32億円、国庫支出金=北見市80億円、我孫子市47億円、道・県支出金=北見市34億円、我孫子市20億円、市債=北見市101億円、我孫子市33億円である。北見市は、予想以上に地方交付税などが多い。

更に北見市は、過疎地を含む都市であるので、総事業費の3割の負担で保育所や診療施設、市道などの整備ができる過疎対策事業債(過疎債)を利用できる。このほか、合併特例債があるので、三重の恩恵を受けている。我孫子市民から見れば、羨ましい限りである。

続いて、歳出部門の公共事業費の執行について紹介する。全国的に公共事業が減少している中で、北見市公共事業費は114億円。例えば、1億円以上の建設事業を挙げると、市民温水プール建設19・2億円、北見赤十字病院改築支援13・1億円、屯田の杜公園整備10億円、中央図書館建設6・3億円、アイスホッケーリンク建設4・1億円(アイスホッケーを応援している者としては、今頃の建設は遅過ぎる)、北見廃棄物処理施設整備2・3億円、端野小学校改築1・8億円、福祉総合相談システム構築1・5億円などである。ちなみに、昨年度の公共事業費は103億円で、常呂カーリングホール建設11・8億円、武道館建設8・9億円を建設している。

一方の我孫子市、土木費は33億円である。その程度の予算額のため、市民会館が平成18年度末に閉鎖されたが、一向に建設に向けての動きがない。当市は、アマチュアの管弦楽団吹奏楽団、合唱団などが活動しており、私も定期演奏会に出掛けた事がある。なかなかの演奏力である。しかしながら、建設に向けての動きがないため、音楽団員が署名活動や募金活動を行っている状況である。

現在、我孫子市には、座席数500人のホールがあるので、そこで演奏会を開いているが、それ以上の観客を集める場合は、隣り町・柏市の施設を利用している。ネットで調べたら、座席数1000人〜1500人の大ホールを建設する場合、30〜50億円の建設費が必要との事。

そのような状況を観ると、政府は北海道の自治体を“至れり尽くせり"で面倒を観ている感じがする。その背景には、最近まで「北海道開発庁」が存在していたように、依然として“北海道開発"というバックボーンがあると感じる。政府は、本年度も北海道開発予算として4953億円を計上している。この資金が、北海道179市町村に補助金として利用されている。

ついでに、主な歳出の内訳を紹介する。議会費=北見市3・3億円(28人)、我孫子市3・3億円(24人)、総務費=北見市107億円(うち人件費88億円)、我孫子市37・6億円、生活保護費=北見市33億円、我孫子市22億円である。

長々と、両市の一般会計予算の中身を紹介した。私が伝えたいのは、明治政府成立150年を迎える現在、北海道に対して依然として“北海道開発"という名目で、特別に予算配分する事が日本国家発展にとって重要な政策であるのか、と言うことである。北海道出身者として、いつまでも中央政府に“おんぶに抱っこ"の現状は、誠に恥ずかしい心境である。その意味で、日本国のためか、地域の自立に繋がるのか、と言う事を優先して予算配分すべきと思う。まさに、以前紹介した星岳雄・スタンフォード大学教授の主張である“生産性が低い公共事業部門への支出を減らすべき"に繋がると思う。健全な国民は、もう少し日本の財政状況を心配して欲しい。