「セメンヤは生物学的に男性」には驚いた

本日の産経新聞を見て、国際陸連の見解として「セメンヤは生物学的に男性」という記事には驚いた。というのは、陸上競技を半世紀にわたってウォッチしてきた吾輩としては、このような記事内容は始めてであるからだ。

そこで、まず最初に、この記事を紹介する。

ローザンヌ(スイス)=共同】

陸上女子800㍍で五輪2連覇中のキャスター・セメンヤ(南アフリカ)が男性ホルモンのテストステロン値が高い女子選手の出場資格を制限する国際陸連(IAAF)の新規定撤回を求めた問題で、同陸連がスポーツ仲裁裁判所(CAS)に対してセメンヤは生物学的に男性との見解を示していたと18日、AP通信や英紙タイムズが報じた。

CASは同日、セメンヤの提訴を退けた裁定書を公開。先天的にテストステロン値が高いとされる同選手は「非常に傷ついた」などと反論した。

ロイター通信によると、IAA側は「ジェンダーとして女性だが、生物学的には男性」といえる性分化上の特質を持つ選手の扱いについて言及していた。

セメンヤはCASの裁定を不服としてスイスの連邦最高裁判所に上訴。同最高裁は結論が出るまで同値を下げる処置を受けずに800㍍に出場できるとの判断を下している。

陸上競技は、単純に肉体の限界に挑む競技であるので、男女差がはっきりと数字に出る。だから、昔から女子選手が世界記録や日本記録を更新した場合、女子選手は必ず医学的に女性であることを証明してきた。だから、吾輩が一番驚いたのは「ジェンダーとしては女性だが、生物学的には男性」という部分である。つまり、身体的な姿形が女性であっても、女性とは言えないという風に理解したからだ。

過去には、世界記録や日本記録を更新した女子選手が、女性であることを証明できなくて、記録が抹消された事例が多数存在する。それだけ、運動能力に男女差がある以上、女子選手が女性を証明することは当然のことであった。

吾輩が今でも忘れなれない記憶は、1964年の東京五輪に出場したエワ・クロブコウスカ(ポーランド)のことだ。東京五輪では、400㍍リレーで金メダル、翌65年には100㍍で11秒1の世界新記録を樹立した。ところが、67年に、染色体検査で女性ではないと診断され、東京五輪での金メダルを剥奪、そして世界記録も歴史から消えた。

(ネットで調べたところ、東欧革命後の1990年に彼女の無実が証明されている、と書かれていた。)

日本でも昔、九州の高校2年生が、女子200㍍で24秒3の日本新記録を樹立したが、いつまで経っても日本陸連日本記録として公認しない。どうしたのかと考えていたところ、新聞が「両親が女子選手の身体検査を拒否した」と報道した。つまり、女子選手の両親は、選手が生まれた時から、ある程度おかしいことを知っていたので、検査を拒否したといえる。そのため、翌年のインターハイは勿論のこと、あらゆる競技会から姿を消した。そして、何十年後に、ある週刊誌がこの選手は男性として生きている記事を掲載した。

要するに、今後は身体的な姿形から女子と性別を判断するのではなく、いろんな面から女性であることを証明する時代がきたようだ。何回も触れるが、運動能力に男女差が絶対的に大きい以上、仕方がないと思うのだ。

ところで、女性は「なぜ、男子の記録更新に男性であることを証明する必要がないのか」と疑問を持っていると思う。その理由は、男子の記録は「人類の記録」という面があるから、男性であることは必要ではないのだ。女性が絶対に男性の記録を上回ることができない以上、男子選手にとっての問題は「人間であるのか」ということだけだ。だから、男子の記録を大幅に更新した場合、その選手は「人間であることを証明しなければならない」ということだ。こんなことはないと思うが、大幅に記録が更新されると、このような疑いが出てくる(笑)。