日本一地価が安いのは北海道の滝上町

4月11日発売の「週刊新潮」(4月18日号)に、見出し「地価1平米1750円ー日本最安の町の自己評価」という記事が掲載された。

3月26日に発表された公示地価によると、全国でもっとも地価が高い市区町村は東京都中央区で、1平米あたり約950万円(商業地)だ。また、上昇率では台湾の半導体企業の進出で沸きかえる熊本県自治体が全国トップ10に三つも入っている。

だが、日本全国でみると、高級住宅地や値上がりしている場所はほんの一部。少子化で毎年80万人近い人口が減っているのだから激安の土地も少なくない。公示地価がいちばん安い市区町村は、北海道の滝上町。1平米あたりなんと1750円(住宅地)というから東京・中央区の5000分の1だ。

地図をめくると、そこは紋別郡という地域にある。旭川市の北東といえば分かりやすいだろうか。JRの駅はなく、最寄りの空港は紋別空港(町の中心部からは車で約40分)。人口は約2300人と少ないが、金融機関は二つあるし、コンビニもスーパーもある。ニセコほどの規模ではないが山にはスキー場があって、当然パウダースノーだ。5月になると町の公園では一面の芝桜が咲き乱れるという。が、どこか閑散としている。

インターネットの不動産広告を見ると、町の中心にある約60坪の土地が90万円で売りに出ていた。物件を扱っている道東ハウジングの担当者が言う。

「いやー、おそらくこの値段では売れんね。滝上町には大きな工場もなければ会社も少ない。勤め先が少ないので、人が集まりにくいんだよ」

滝上町の名誉のために書いておくと、土地が広い北海道は地価の安い市町村が他にもごろごろある。

そこで、同町の清原尚弘町長に聞いてみると、

「え、最下位なんですか?知らなかった……」

との反応。だが、こうも話すのだ。

滝上町は畜産や林業がメインの町です。そうした事業は安定していて、雇用の不安はほとんどありません。クマはよく出没するけど犯罪はほとんど起きないから治安もいい。考えてみれば地価が安いというのは生活費などのコストがかからないということ。ここに引っ越してきてビジネスなどを始めるにしてもやりやすい町だと思いますよ」

ニセコ富良野ばかりが北海道ではない。スーパーのセールみたいな地価でも、住めば都と言うではないか。

もう20年前か、30年前か、40年前か忘れたが、滝上町の中学時代の同級生が上京してきたので都内で飲食し、二次会として別の場所に移るためにタクシーに乗車した。その際、吾輩が「滝上では、100坪くらいの土地は200万円も出せば買えるのか」と尋ね、同級生が「いや、場所さえ選ばなければ100万円も出せば買えると思う」などと対話したところ、タクシーの運転者が多少振り返りながら「お客さん、今の話はどこの話ですか」と尋ねてきた。そこで吾輩は「北海道のオホーツク海の近くにある滝上町の話です」と説明したところ、運転手は「日本にもこんなところがあるんですね。今通ってきたところは、坪1千万円ですよ」などと言った。

要するに、滝上町に関係している人ならば、誰でも地価が断然安いことは知っていることである。なんせ1960年当時の人口が1万3437人であるのに対し、現在の人口は約2300人であるので、空きの住宅地がどんどん広がっているのだ。どうですか、多くの住民は小さな畑を耕して野菜は自給しており、生活費はそれほど多くかからないようなので、田舎暮らしを考えている人は検討してみてはいかがですか。詳しく知りたい人は、町役場に尋ねてみて下さい。